2015 Fiscal Year Annual Research Report
超音波映像資料から見るロシア語の有声阻害音と無声阻害音の喉頭特徴
Project/Area Number |
15H06832
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
松井 真雪 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, プロジェクトPDフェロー (00759011)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | Articulatory Phonetics / Ultrasound Imaging / Voicing Contrast / Russian / Laryngeal typology |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ロシア語の有声阻害音と無声阻害音の対立と中和を調音音声学的観点から検討することを目的とする。 初年度にあたる平成27年度の研究実績は、次の通りである。最初に、次年度に予定されているロシアでの資料収集 (超音波映像を収集するための音声産出実験) に向けて、試験語リストの作成、実験に使う機材の準備、および調音音声学の専門家との議論を進めた (平成27年9月~12月)。10月下旬には、カナダの調音音声学者と研究相談の機会を持った。 次に、ロシアの研究者・研究機関と連絡を取り合いながら、次年度に実施する調査の具体的な日取りや設備 (録音室など) 使用のための研究協力体制を取り付けた。なお、当初の予定では、平成28年1~3月に、国内で、超音波装置を用いた予備実験もおこなう見通しであったが、必要機材の搬入時期の遅延にともない、国内での予備実験は延期された (代替策として、次年度初頭の、平成28年度4月にモスクワにおいて実施)。 上記の他に、有声阻害音と無声阻害音の喉頭特徴について、より深い考察を可能とするためにおこなった音声産出・音声知覚実験の結果を、国内外の学会で発表するとともに、研究成果を学術論文にとりまとめた (Matsui, in press)。この学術論文は、論文集 (J. Szpyra-Kozlowska and E. Cyran (eds.), Phonology, its Faces and Interfaces. Frankfurt am Main: Peter Lang) における論文として、次年度以降に出版が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は3点ある。第1に、試験語リストの作成、実験に使う機材の準備等、次年度の調査実施のために必要な準備がおおむね予定通り進められた点である。必要機材の搬入時期は当初の予定よりも数ヶ月遅延したが、年度内には搬入が完了し、動作確認をすることが出来た。第2に、ロシアの研究者・研究機関と調整し、調査の具体的な日取りや設備 (録音室など) 使用のための研究協力体制を取り付けられた点である。当初の予定では、オレンブルグ国立大学を研究拠点とする見通しを持っていたが、調整した結果、より効率的な資料収集が可能となりうるモスクワ国立大学を研究拠点とすることが可能となった。最後に、研究成果として研究発表ならびに学術論文を提出することができた点である。以上3点の理由から、平成27年度の研究はおおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づき、平成28年4月にロシア連邦において調音音声学実験を実施する予定である。現地研究機関の研究者 (モスクワ国立大学) と調整をはじめており、研究の展開によっては共同研究を進めることも念頭においた協議が進んでいる。国内だけではなく国外の研究者とも連携をとり合い、優れた学術研究成果を社会に生産的に発信してゆくことは、我が国にとっても、世界にとっても、学界にとっても、有意義なことであると考える。 したがって、研究代表者は、今後の研究の推進方策として、研究計画の一部を変更した。具体的には、次の2点である。第1に、当初の予定では、オレンブルグ国立大学を研究拠点とする見通しを持っていたが、調整の結果、より効率的な資料収集が可能となりうるモスクワ国立大学を今回の研究プロジェクトの研究拠点とした。第2に、当初の予定では、3週間程度の調査を1回のみ実施することを計画していたが、より柔軟性の高い調査内容や追試実験等を可能とするために、調査を2回に分割して実施することとした。 さらに、平成27年度の研究成果によって、有声阻害音と無声阻害音の喉頭特徴の対立や中和を正確に理解するためには、喉頭部だけではなく、喉頭よりも上部の調音動態にも着目する必要があることが示唆された。したがって、来年度は、より広い視野から、ロシア語の有声阻害音と無声阻害音の調音動態を検討してゆくことによって、より高い研究成果を得ることを目指す。
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Research Products
(5 results)