2015 Fiscal Year Annual Research Report
The establishment of an universal gene targeting system with novel positive-negative selection in plants
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15H06853
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
横井 彩子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門 遺伝子利用基盤研究領域, 研究員 (10760019)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ジーンターゲッティング / ポジティブ・ネガティブ選抜 / キメラリプレッサー / ファイトスルフォカイン(PSK) |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、イネでのみ確立されているジーンターゲッティング(GT)を様々な植物種に適用可能な汎用的な実験系へと発展させるため、以下の2つのアプローチにより双子葉のモデル植物であるタバコにおいてGTによる内在性遺伝子の改変に取り組んでいる。 ・ネガティブ選抜のタイミング調節が可能な条件的ネガティブ選抜マーカーの利用 申請時に考案したネガティブ選抜マーカー(温度感受性ジフテリアトキシンDT-Ats、キメラリプレッサーによるポジティブ選抜マーカーの抑制)の発現ベクターを作製し、イネおよびタバコに形質転換して薬剤耐性カルスおよびシュートの出現頻度によってネガティブ選抜効果を検証したが、いずれの選抜系も十分なネガティブ選抜効果を発揮しなかった。しかし、キメラリプレッサーによるポジティブ選抜マーカーの抑制は、キメラリプレッサーの発現をより高く、ポジティブ選抜マーカーの発現をできるだけ低くすることが重要であり、改良の余地は残されていると考えられる。さらに、これまで双子葉および単子葉において、ネガティブ選抜マーカーと利用されているシトシンデアミナーゼ(CodA)の利用も試みる。 ・GTに成功した細胞の増殖促進 イネカルスにおいて細胞増殖活性を示すことが知られている分泌型ペプチドであるファイトスルフォカイン (PSK) をカルス誘導培地に添加し、細胞増殖活性を検証した。しかし、様々な生育温度においても顕著な細胞増殖活性を示さなかった。そこで、イネ内在性PSKであるOsPSK1αをイネカルスに過剰発現させて細胞増殖活性を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・ネガティブ選抜のタイミング調節が可能な条件的ネガティブ選抜マーカーの利用 【温度感受性ジフテリアトキシンDT-Ats】DT-Atsは、18℃以下の低温で毒性を示すことが知られている。そこで、DT-Ats過剰発現ベクターをイネカルスおよびタバコ葉片にアグロバクテリウムを介して形質転換し、形質転換カルスおよび葉片を選抜培地に置床して17~18℃で培養した。しかし、DT-Ats形質転換イネおよびタバコのいずれにおいても、GFP形質転換コントロールに比べて低温条件下で生育の阻害は認められなかった。また、この結果は、低温での培養期間を延長しても同様であった。 【キメラリプレッサーによるポジティブ選抜マーカーの発現抑制】キメラリプレッサーによる発現抑制効果を、Nicotiana benthamianaを用いたレポーター遺伝子の一過的発現系で評価した。その結果、キメラリプレッサーの発現は顕著にレポーター遺伝子の発現を抑制でき、この実験系がネガティブ選抜マーカーとして利用できることが示された。そこで、nptIIをポジティブ選抜マーカーとして、キメラリプレッサーの発現が形質転換カルスの増殖を抑制できるかどうかを、イネおよびタバコにおいて評価した。その結果、イネおよびタバコのいずれにおいても、明らかなネガティブ選抜効果は認められなかった。 ・GTに成功した細胞の増殖促進 イネカルスにおいて細胞増殖活性を示すことが報告されている分泌型ペプチドファイトスルフォカイン (PSK) をカルス誘導培地に種々の濃度(0, 0.1, 1.0 nM)で添加し、細胞増殖活性を検証した。しかし、通常の培養温度(33℃)では無添加の培地上での増殖と違いは認められなかった。そこで、様々な生育温度(18, 22, 28℃)で培養したところ、この条件においても顕著な細胞増殖活性を示さなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
・ネガティブ選抜のタイミング調節が可能な条件的ネガティブ選抜マーカーの利用 DT-Atsは、イネおよびタバコにおいてもネガティブ選抜効果が見られなかったため、ネガティブ選抜マーカーとしての使用を断念する。また、キメラリプレッサーによるポジティブ選抜マーカーの抑制系は、キメラリプレッサーの発現をより高く、ポジティブ選抜マーカーの発現をできるだけ低くすることが重要であり、発現カセットを改良してネガティブ選抜効果を再検討したい。また、新たに改良型シトシンデアミナーゼ (CodA) を利用する。CodAは、5-フルオロシトシン (5-FC) を毒性のある5-フルオロウラシルに変換する活性を持ち、改良型CodA (D314A) は野生型に比べて5-FCに対する高い特異性を示す。これまでに、CodA (D314A) は双子葉、単子葉植物においてネガティブ選抜効果を示し、イネにおいてはCodA (D314A) をネガティブ選抜マーカーとしてジーンターゲッティング細胞の選抜に成功している。さらに最近、5-FCへの特性を高めた変異型CodA(V125A/F316C/D317G)が報告されている。この変異型CodAのネガティブ選抜効果も同様に評価する。最終的に、これらのネガティブ選抜マーカーを利用したポジティブ・ネガティブ選抜法を用いてタバコにおいてジーンターゲッティング系の確立を試みる。 ・GTに成功した細胞の増殖促進 カルス誘導培地にPSKを添加してカルスを培養したところ、顕著な細胞増殖促進効果は得られなかった。そこで、イネ内在性PSKであるOsPSK1αをイネカルスに過剰発現させて細胞増殖活性を評価する。さらに、ポジティブ選抜マーカーとこれらの分泌型ペプチドの共発現と新規条件的ネガティブ選抜マーカーを組み合わせたGTベクターを構築し、さらにGT効率を向上させることができるかを検討する。
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