2015 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトールリン脂質キナーゼのリン酸基転移反応の分子基盤の解明
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15H06855
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
佐藤 友美 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (20759211)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 構造生物学 / X線結晶構造解析 / キナーゼ / 相互作用解析 / イノシトールリン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イノシトールリン脂質キナーゼ(PIPK)による基質のリン酸化反応の分子基盤を明らかにすることである。本研究では、イノシトールリン脂質キナーゼの1種であるPI5P4Kβを用い、基質であるホスファチジルイノシトールリン脂質(PI5P)複合体のX線結晶構造解析を主軸として、脂質二重膜が存在する状態での生化学的な解析やNMR解析の結果とも合わせて、脂質二重膜存在下でのPIPKの反応機構を明らかにする予定である。 前述した目的を達成するためにはPI5P4Kβ-GTP-PI5P三者複合体のX線結晶構造解析を行うことが重要であるが、そのためには両者の結合強度の把握が重要となる。両者の結合に関しては、リポソームに組み込んだPI5Pを用いた場合にはキナーゼ活性が観測されているものの、リポソーム非存在下では基質との直接の結合が観測されていないため、脂質二重膜が結合に重要な役割を果たしていることが予測されていた。 昨年度は、リポソーム存在下でのPI5PとPI5P4Kβの結合強度の目安を把握するため、リポソームに組み込んだPI5Pを用いてSPR解析を行った。その結果から、PI5Pの有無に関わらず結合定数はマイクロモルオーダーであり、PI5P存在下では結合強度が数倍程度上昇することが明らかとなった。この結果より、PI5P4KβはPI5P非存在下でも比較的強く脂質二重膜と結合しており、PI5P自体との結合は弱いことが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度より研究を開始し、PI5P4Kbの発現精製を行い、SPR解析を行うことができ、研究の基盤を作ることができた。さらに、SPR解析よりPI5P4KbとPI5Pの結合様式に関する知見も得られたため、概ね進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
PI5P4Kβ-GTP-PI5P三者複合体構造の取得にあたり、(1)SPR解析によるPI5P自体との結合定数の測定を行い、 (2)SPR解析による脂質二重膜の代わりとなるような界面活性剤などの化合物の探索と結晶化、(3) Lipidic cubic phase (LCP)法や脂質存在下での結晶化、の3種類のアプローチを行う予定である。これらの方法のいずれかにより結晶が得られれば、Photon Factory (PF)においてX線回折実験と構造決定を行い、PI5Pに由来する電子密度の有無を観測する。三者複合体の結晶構造が得られれば、PI5P4Kβの基質認識やリン酸化反応に重要な役割を示すアミノ酸残基をピックアップし、変異体を調製し、脂質二重膜の有無や種類を変化させてSPR解析やキナーゼ活性測定を行う。さらに、脂質二重膜存在下と非存在下、脂質二重膜の種類の違いによるNMRスペクトルの比較とアミノ酸残基のマッピングの結果から、脂質二重膜存在下でのPI5P4Kβの反応機構を解明する。
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Research Products
(1 results)