2015 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the catalog of various exosomes for efficient drug delivery by the analysis of their physicochemical property-pharmacokinetics relationship
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15H06865
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藁科 翔太 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 特別研究員 (30755393)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | エクソソーム / DDS |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、細胞間の情報伝達の役割を担う脂質構造体であるエクソソームのDDS(drug delivery system)への応用の促進を目指し、「カプセル」となるエクソソームの情報(物性と動態)収集及び、「薬」となる生理活性物質のエクソソームへの内封手法の検討を、本申請研究において実施している。 ①物性と動態の相関性解析では、「がんへの親和性・移行性が高いエクソソームを見出すこと」をモデル的な目標として設定し、その目標を達成するために必要な情報を収集することを考慮して評価項目を決定した。エクソソームを介した情報伝達によりがんの成長を調節すると考えられるがん組織の周辺細胞(がん細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、マクロファージ)に着目し、これらの細胞株から分泌されたエクソソームの物性(サイズ、脂質組成、タンパク質発現等)と、がん細胞への親和性(細胞取り込み)をそれぞれ評価し相関性を解析することで、がんDDSに適したエクソソームの選定を現在試みている。実際に、様々な評価系の中からエクソソームの物性評価に適した系を選択し、比較する準備を整えた。また、血管内皮細胞株由来のエクソソームはがん細胞へ取り込まれにくいことが明らかとなり、他の細胞由来のエクソソームと物性面で大きく異なっている可能性が示唆された。 平成28年度に実施予定であった②エクソソームへの分子封入手法の検討も並行して取り組み、エクソソームが有するDDSに有利な物性(組織・細胞標的性等)を失わない分子封入手法として、リポソームを用いたエクソソームとの膜融合戦略に着目・注力した。エクソソームの物性への影響が予想される正電荷素子を含まないリポソームを構築し、エクソソームと混合することで、リポソームとエクソソームの効率的な膜融合を示唆する結果が得られた。また、膜融合効率は、リポソームの脂質組成に大きく依存することも同時に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、平成27年度では物性と動態の相関性解析を行う計画であり、エクソソームの物性(脂質組成、タンパク質、糖鎖等の発現)と動態(in vitro系における細胞取り込み、in vivo系における体内動態評価)を評価し、相関性を示すところまで達成することを目標としていた。実際に平成27年度において到達したのは、①がんを標的としたDDSに有用と考えられるエクソソームを分泌する細胞種(株)をリストアップし、物性及び動態評価において比較する環境を整備したこと、②エクソソーム物性(サイズ、脂質・タンパク質・糖鎖発現)の評価に適した実験系の探索及び構築、③in vitro系におけるエクソソームのがん細胞への取り込みを比較し、がん親和性が高いまたは低いと考えられるエクソソームの探索にとどまった。②では、当初評価予定であった細胞取り込み・体内動態への影響が高いと考えられるエクソソームの因子に加え、候補以外の因子の網羅的な比較が重要であると考察されたため、プロテオミクス・リピドミクス的な解析の準備を行っている段階である。③では、エクソソームの体内動態を高感度で測定・比較するためにPETの利用を構想しており、PET試験に用いるポジトロン放出核種をエクソソームに標識するための脂質キレーターを設計・合成したが、エクソソームへの修飾効率が低く、他の脂質キレーターの有用性を評価している段階である。 一方で、平成28年度から開始する予定であったエクソソームへの分子封入手法の検討を並行して行った。エレクトロポレーション、膜融合性ペプチド等の様々な分子封入手法の中で、リポソームを用いたエクソソームとの膜融合戦略が効率的な分子封入を実現するために優れている可能性が示唆された。現在は、リポソームによる 膜融合による分子封入を、より定量的に評価するための実験系を構築している段階である。 上述の状況を総合的に考え、やや遅れていると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の項で記載した通り、平成27及び28年度に実施予定であった物性と動態の相関性解析、エクソソームへの分子封入手法の検討を継続して実施する。 物性と動態の相関性解析において、①プロテオミクス・リピドミクスによるエクソソーム表面タンパク質・脂質の網羅的な解析及びエクソソーム間の比較、②エクソソームのPET評価に必要な脂質キレーターの修飾条件検討、③in vivo系における体内動態評価を行う。①では、解析の専門的知識・技術を有する外部機関・研究室に解析を委託する。②では、引き続き脂質キレーターの合成及び機能評価を行う。②の終了後、③PETにより体内動態を評価する。②が進展しない場合は、代替分子(蛍光等)を修飾したエクソソームを用い、IVISによる動態評価を試みる。以上の結果をまとめ、エクソソームカタログを作成する。 エクソソームへの分子封入手法の検討では、リポソームを用いた膜融合戦略の有用性をより詳細に示すため、④融合に用いるリポソームの脂質組成の最適化(融合効率、物性への影響)、⑤エクソソームとリポソームの膜融合及びエクソソームへの分子封入を定量的に解析する手法の検討を行う。④では、これまでに膜融合性を評価した様々な脂質組成のリポソームを用いてエクソソームと融合させた後、エクソソームの動態への寄与が高いと考えられるエクソソーム表面の物性(脂質組成・タンパク質発現等)が大きく変化していないことを示す。⑤では、FRETを応用した解析法、粒子の質量に基づいた膜融合・分子封入確認系の構築を試みる。④、⑤の検討後、分子封入エクソソームの機能(細胞取り込み、封入分子が細胞に与える影響等)をin vitro系で評価する。 以上の検討が終了後、⑦がんへの親和性・移行性が高い、膜融合戦略を用いて治療分子を封入したエクソソームを担がんマウスに投与することで、本研究の目標であるエクソソームカタログDDS戦略の有用性を示す。
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