2015 Fiscal Year Annual Research Report
胃におけるILCsの局在とその役割解明に関する研究
Project/Area Number |
15H06866
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 尚子 (高山尚子) 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学センター, 研究員 (90732446)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 粘膜免疫 / 自然リンパ球 |
Outline of Annual Research Achievements |
摂取した食物を消化する為に常に強酸性状態に保たれている胃での共生細菌の存在は長年否定されてきたが、ヘリコバクター・ピロリの発見と胃潰瘍との関連性を皮切りに、共生細菌の存在と疾患への関連性が明らかとなってきた。これは、胃における免疫応答および免疫担当細胞の存在の可能性をも示唆している。しかしながら、現在までに胃における細胞の存在・詳細およびその役割についての報告は未だほとんど無く、特に共生細菌と免疫応答との関連性については全く明らかとなっていない。そこで当該研究では、胃に存在する免疫担当細胞、特に当該研究者らが同定した自然リンパ球(Innate lymphoid cells; ILCs)と共生細菌・感染性細菌との関連性に注目し、メタゲノム解析による網羅的な共生細菌の解析と胃疾患に関連する特異的細菌の同定を行う事を目的とし研究を遂行してきた。 当該研究では、広く粘膜組織におけるILCsの役割を明らかにするために、特に未だ不明点の多い「胃」に注目して研究を行い、最終的に多臓器官におけるILCsの役割とその制御機構を明らかにすることで、それぞれの臓器特異的疾患の発症機構への関与を解明する事を目的とし研究を進めている。また、同時にILCsへのさらなる理解を基本とし、胃に存在する細菌(共生細菌または病原性細菌)の影響と感染による発症機構を明らかにし、「胃」におけるILCsの防御的役割を解明する。実際に、胃に関しての免疫学的な報告は非常に少ないので、これらが明らかになることで粘膜組織の多臓器間ネットワークを介するサイトカイン産生制御法や発症メカニズムを利用した抗感染症医薬の開発に繋がることが期待できると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成27年度は順調に研究を進めることができた。 ―自然リンパ球サブセットの表現型・機能の同定 C56BL/6またはRag―/―マウスの胃から細胞を単離し、細胞内染色にて各種転写因子(Eomes,T-bet,GATA3,RORαなど)発現とIFN-γを始めとした各種サイトカイン産生を比較し、特異的なサイトカイン産生を同定することができた。 ―胃に存在する共生細菌とILCsの関連性の確認 無菌マウスの解析により、無菌条件下において胃に存在するILCsの影響・変化を細胞数及び機能(サイトカイン産生能)を含め比較し、共生細菌の影響を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進として、下記の内容を進める予定である。 ―次世代シークエンサーを用いた網羅的ゲノム解析(メタゲノム解析)による共生細菌の同定:今後はメタゲノム解析により胃組織に存在する共生細菌の組成並びにそれらが保有する遺伝子を同定し、共生細菌とILCの関連性を検討する ―共生細菌を用いた感染実験:メタゲノム解析より絞り込んだ一種または特定の細菌を、経口で無菌マウスに投与することにより作成した単一細菌定着(モノアソシエート)マウスの解析を行う予定である。
|