2015 Fiscal Year Annual Research Report
ASTRO-Hによるブラックホールジェット噴出機構のプラズマ組成分析
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15H06896
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
小山 志勇 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (80758186)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 高エネルギー宇宙物理学 / ブラックホール / X線観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
すざく衛星によるブラックホール天体LMC X-1の観測データの解析を行った。X線スペクトルの時間変動に注目し、1-2 keVの軟X線帯域で支配的となる約300 secにピークを持つ準周期的変動があることを発見した(Koyama et al. 2016)。これは比較的冷たい降着円盤とその周辺の高温プラズマが大局的には独立に変動していることを示唆しており、降着円盤の状態遷移に対して新たな知見が得られた。また従来考えられていたブラックホールのスピンと干渉して発生する準周期的変動は硬X線帯域で支配的になるのに対して、今回発見した準周期的変動は軟X線帯域のスペクトルを持つため、異なるメカニズムをと持つ考えられる。 ひとみ衛星(ASTRO-H)搭載の軟X線分光装置の打ち上げ前の最終調整に参加した。また打ち上げ後の立ち上げオペレーションおよび、軌道上での検出器の健全性確認を行った。現在は初期観測データの較正を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すざく衛星で観測された結果に加え、欧州のXMM-Newton衛星と米国のNuStar衛星による同時観測のアーカイブデータの解析に着手した。またそれらをもとにひとみ衛星で観測されうる結果のシミュレーションと、データ解析の自動化の準備を完了した。 またひとみ衛星の軟エックス線分光装置に携わり、打ち上げ前準備、軌道上の立ち上げは完璧に完了し、最初期の観測では世界最高水準の観測データが得られている。 しかし、2016年3月末からひとみ衛星との通信が不通となっており、本研究のターゲットを含む、当初計画されたいた観測の大部分が行われていない。
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Strategy for Future Research Activity |
代替案として考えていたNuSTAR衛星のアーカイブデータの解析を進めている。 今後はNuSTAR衛星とXMM-Newton衛星の同時観測のアーカイブデータの解析を行い論文を投稿する。降着円盤の状態に伴う硬X線放射の振る舞いの違いを検討し、ジェットのleptonic成分について制限をつける。 またわずかながら残されたひとみ衛星の観測データを最大限に活用するためのデータ較正を進めていく。同時に、次世代の観測装置の開発を検討する。
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