2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06900
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Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
溝口 貴弘 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー, 戦略的研究シーズ育成事業, 研究員 (80759308)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 力触覚技術 / 動作情報 / インピーダンス / 力率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、社会の成熟化に伴って高まっているロボットを活用した人間支援達成のために、人間の意図や身体情報を力触覚技術を援用して定量化する。現在人間同士で支援を行う場合には、視覚聴覚情報に加え、力触覚情報を手がかりとしている。例えば片麻痺患者のリハビリテーションにおいては固着した関節をストレッチするリハビリテーションを行うが、作業療法士は手先に感じる感触から、施術の強弱を調整している。これは関節に無理な力を加えることは効果的ななリハビリテーションにならないばかりか、腱や筋肉を痛める結果につながる危険性からである。患者の「痛い」や「まだ大丈夫」などの情報を抽象的に力触覚から得ているのである。平成27年度に実施した本研究課題においてはリハビリテーションを模擬した実験装置において動作のインピーダンス情報を動的に取得することで、人間が抽象的に得ている感覚の定量化を行った。さらに、人間の身体的なインピーダンス変動をエネルギーの観点から運動力率として取得することに成功した。元々力率は電気回路において有効に活用されるパワーと無効となるパワーの割合を評価するために使われる指標であるが、本研究ではこれを身体特性の評価に活用する。これまで研究者が行ってきた研究では静的なインピーダンスにおける力率は取得可能であることを示していたものの、実際に人間の身体情報をで同種の情報の動的な取得が可能であると示せたことは大きな進捗である。本年度の成果では脱力状態では外力が効率的に動作に変換されることから高い運動力率とを示し、麻痺を模擬するためにバネを腕に装着した状態では外力が動作に変換されにくくなることから低い運動力率を示すことが定量的に計測できた。本結果により麻痺の加減や強張りなどの定量化への見通しがたったといえる。本研究成果はIEEE Industrial Electronics Societyの年次会議であるIECON2016に現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では研究計画を研究計画A「双方向制御による抽象度の高い情報の取得・共有」、 研究計画B「身体機能の定量化に基づく情報の統一的な定量化および動作支援法の確立」、研究計画 C「力触覚機能付運動支援ロボットの開発」の3つに大別し、それぞれを随時達成することで研究を確実に遂行している。平成27年度に行った研究では人間の動的な身体特性の変化を運動力率として定量化することに成功した。これは研究計画Aおよび研究計画Bの前半部に相当する成果である。研究開始当初研究代表者は人間の特性の動的な取得のためには双方向制御が最適であると考えていたが、研究を進めるうちに人間が主体的に行う行為における身体特性の評価には外力としてエネルギーを与えることの方が効果的であるとの見解に至った。外力としてエネルギーを注入し、そのエネルギーの様子を取得することで実時間で動的な運動力率を計測することができ、身体特性の取得方法を確立できた。研究計画Cにおいては本年度に1自由度の試験装置を試作し、様々なアクチュエータで検証試験を行いシステム設計上の問題がないことを確認した。本結果に基づき平成28年度試作予定の多自由度装置に関しては、リハビリテーションセンターで行ったヒアリングの結果、本研究課題で題材とするリハビリテーション動作を変更する可能性が出てきたが、3Dプリンタを用いた試作機であるため、次年度に十分対応可能であると考えられる。以上の成果より本研究は順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では研究計画Aおよび研究計画Bにおいて抽象的な身体特性の定量化に関する大きな進捗を得ることができた。一方で外部からエネルギーを流入して運動力率を計測する手法の検証がまだまだ十分ではないため、定量化手法の高品質化を図る必要がある。特に外部入力と人間が主体的に行う動作の干渉に関する検討が必要である。本問題に関しては外部入力を高周波とすることで身体特性の定量化が対象とする周波数帯域と、人間が主体的に動作を行う周波数帯域を分離し、非干渉での計測が可能であると考えている。本手法では人間の身体特性がすべての周波数帯域で均一であるという大きな仮定が含まれているが、既に実施した検証試験では約20Hz程度までの帯域においては人間の身体特性は同一の値を示すとの知見を得ている。さらに、定量化した身体特性を活用したリハビリテーション手法を確立し、研究計画Bを完遂する。作業療法士が実際に行うように定量化した身体特性情報に基づき、リハビリテーション支援装置の出力を調整する等の手法を想定している。また、研究計画Cにおいては多自由度のリハビリテーション支援装置を試作し研究機関内の臨床試験を目指す。リハビリテーション動作の対象が指のリハビリテーションから別部位に変更になる可能性があるが、多くの自由度を必要とせず、3Dプリンタで作成可能であれば次年度での設計変更は十分に可能である。研究成果は平成28年末までにまとめ、国際会議への論文投稿を行い、さらに年度末には臨床結果と共に国際論文誌へ投稿する。
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