2015 Fiscal Year Annual Research Report
微生物電解セルにおけるCO2からの有用物質生産メカニズムの解明
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15H06906
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
石井 俊一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海底資源研究開発センター, 研究員 (10556913)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物電解セル / 電気合成 / メタン生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、微生物電解セルを用いて、電極上でCO2を固定する微生物の集積培養を行った。陽極、陰極共に炭素織布(3cm x 6cm、有効表面積36cm2)を使用し、電極間に0.6Vの電圧印加を行い、発生する電流をモニタした。液相および微生物源として、沿岸堆積層からの砂層を含む湧き出しかん水を用い、ガス相は、N2:CO2(=80:20)に置換した。液相は、スターラーにて攪拌し、30度にて3ヶ月超の長期培養を行った。 電圧印加を行ったバイオリアクターでは、数日のラグタイムの後、電流の産生が始まり、最終的に1-2mAほどの安定的な電流産生が見られた。物質転換速度の解析を行うため、ガス相の分析を行ったところ、ごく初期に水素産生が見られ、その後、二酸化炭素の減少および、メタンの生成が見られた。電圧を印加しない対照運転では、そのようなメタンの生成が見られなかった事から、陰極にて電子を受け取りメタン生成を行う微生物が集積され、電気的生合成反応が起こっている事が示唆された。 上記の結果より、電極上のバイオフィルムには、電気的生合成を行う微生物をが含まれると考えられる。そこで、微生物群集構造を解析するため、電極(陽極、陰極)を1cm2ほど嫌気ボックス内で採取すると共に、浮遊微生物も採取し遠心分離によりペレット化した。これらのサンプルを、電圧印加したリアクターおよび、電圧印加無しの対照リアクターにて、経時的に二回サンプリングした。これらのサンプルは、-20度に保存してあり、現在、DNA抽出および16S rRNAを用いる微生物群集構造解析を行う準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気的生合成を行う微生物群集の集積に成功し、CO2と電気(電子)からメタンを生成する事が出来た。また、それらの微生物の群集構造および、メタゲノムを行うための電極のサンプリングも行った。 他の電子受容体を用いた集積培養は、少し遅れているが、培養システムは作成済みであり、次年度に培養を開始する事が出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
電気的メタン生成を行っているバイオリアクターと、電圧印加無しのリアクター中の16S rRNAを用いた微生物群集構造の経時的変遷と、定量分析によって得られた物質転換速度を統計的な手法によって関連付けを行い、どの微生物群が電気的生合成反応と相関が高いかを明らかにする。 その後、電気合成反応が高活性で起こっている微生物群集のメタゲノム解析を行う。得られるリードは、CLC genomic workbenchを用いてアセンブリし、CLC genome finishing moduleを用いて優占種のドラフトゲノムを得る。それらのドラフトゲノムより、各微生物の代謝経路の再構築を行う。これらの結果を総合し、電気的生合成に関与する微生物および遺伝子群を明らかにする。
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