2015 Fiscal Year Annual Research Report
成木との血縁関係や外生菌根菌菌糸網の影響も踏まえたブナ実生個体群動態の総合的理解
Project/Area Number |
15J00007
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
赤路 康朗 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ブナ林 / 血縁関係 / マイクロサテライトマーカー / 階層ベイズモデル / 時空間変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はブナ実生の動態を成木との血縁関係や外生菌根菌菌糸網を含めて総合的に説明することを目的とする。今年度は本研究目的の内、特に、成木との血縁関係と実生の生残および成長の関係解明を行った。この解析におけるブナ実生の成長、生残、および遺伝型のデータは、若杉ブナ天然林(岡山県西粟倉村)における2年性と6年性のブナ実生について、2012年から2013年までの間に取得していたものを用いた。ブナ実生と成木の遺伝型から、実生と周辺同種成木との血縁度を算出した。野外における空間自己相関のノイズを考慮したモデル(Intrinsic CARモデル)を用いて、血縁度を説明変数、ブナ実生の生残および主軸長を応答変数として回帰を行った。結果として、血縁度と2年性実生の生残の間には負の関係性が、血縁度と6年性実生の生残の間には正の関係性がみられたが、これらの関係性は有意ではなかった。一方で、血縁度と6年性実生の主軸長の間には有意な正の関係性が存在していることが明らかとなった。冬以降は、この正の関係性を引き起こすメカニズムを探索するため、宿主の血縁度と外生菌根菌群集構造の類似性の関係解析のための準備を進めている。また、9月には、2011年から上記調査林分で毎年行っているブナ実生の追跡調査を実施し、ブナ実生約1400個体について、生死、主軸長、および新規加入を記録した。その後、2011年から2015年までの5年分のデータを集計し、空間解析によって出現場所および死亡場所の時空間変動を解析した。結果として、ブナ実生の出現や死亡が多く発生する場所は毎年同じではなく、時間的な変動が存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はブナ実生の生残および成長と周辺成木との血縁度の関係を解析した論文が国際誌に受理された。また、現在も1本論文を執筆中であり、近々、投稿予定である。このように、研究の発表については進捗状況は概ね順調である。しかし、今年度に予定していた菌根菌の解析については、関連する技術の習得に時間がかかってしまい、本実験を行うことができなかった。これら全体的な状況から、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
6月中旬までに土壌とブナ実生のサンプリングを行い、菌根菌関連の実験を夏までに終わらせる予定である。得られたデータから、宿主の血縁度と外生菌根菌群集構造の類似性の解析を随時行っていく。さらに、操作実験として、ブナ実生の生育場所の入れ替実験も予定しており、現在、滅菌土壌下でブナ実生を生育させている。また、空間非定常性を考慮した環境条件とブナ実生の生残の関係解析についての論文を6月中に投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)