2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J00015
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
吉永 裕登 一橋大学, 大学院商学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 利益持続性 / 集約 / 利益・リターン関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学際的かつ多角的な観点から会計利益の持続性を研究することである。近年、会計研究領域では同時期における個別企業の会計情報を平均・合計などを行った集約レベルの会計情報を用いる研究が徐々に蓄積されている。そこで本研究では、個別企業の情報として捉えられることの多い会計情報を集約し、同時期の上場企業の代表的な状況を表す集約レベルの会計情報に注目して研究を進めている。 平成27年度には、集約レベルでも四半期利益の前年同期比での変化には利益持続性があることを確認した上で、1集約レベルの利益情報はGDP成長率の将来予測に資するかどうか、2利益持続性があれば当然観察されるはずの正の利益・リターン関係が、なぜ集約レベルでは観察されないのか、という2つの観点から研究を進めてきた。第1の観点に基づく研究の結果、集約された利益の変化はGDP成長率の将来予測に対する有用性を持つことを支持する結果が得られた。 第2の観点に基づく研究では、そもそも集約レベルにおける利益・リターン関係が米国以外では頑健に観察されておらず、米国特有の現象ではないかという指摘が挙げられていることを踏まえ、まずわが国における集約レベルでの利益・リターン関係を観察するところから開始した。その結果、わが国でも集約レベルでは負の利益・リターン関係が観察されうることが判明し、これがなぜ観察されるのかに関する研究へと進めている。 平成27年度の主な研究成果としては次の通りである。第1の観点に立つ研究は中野誠教授(一橋大学)との共著の形で進め、公刊されている。第2の観点に立つ研究は現在2本のワーキング・ペーパーにまとめており、投稿準備に取り掛かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では利益持続性が集約レベルで観察される負の利益・リターン関係などに及ぼす影響について研究する予定であった。しかし、そもそも米国以外ではこの負の利益・リターン関係が観察されておらず、また米国でもそのメカニズムは十分に明らかになっていない。そのため、平成27年度はそもそもわが国では集約レベルで負の利益・リターン関係が観察されるのか、また米国と同様のファクターがこの現象を引き起こすのか、という研究の基盤となる点について重点的に分析を行った。 こうした研究計画の軌道修正はあったものの、上記の研究結果は2本のワーキング・ペーパーにまとめており、複数の共著論文も公刊されているため、利益持続性に関する多角的な研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では幅広く利益持続性に関する研究を行う予定であったが、今後はとりわけ集約レベルにおける負の利益・リターン関係に関する研究に注力する。すなわち、今後の研究では平成27年度に獲得した知見を元に分析を精緻化することで、「ミクロ・マクロ・パズル」現象の解明に貢献してゆきたい。
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Research Products
(11 results)