2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J00033
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石田 真子 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 音韻修復 / 音声知覚 / 第二言語習得 / 英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究活動では、日本学術振興会に提出済みの研究計画に沿って、英語母語話者・第二言語習得者の音韻修復(崩れた音声を脳が修復して聞く能力)について研究を行った。具体的には、(1)音声の一部を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(音素レベル)と、(2)音声の全体を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(単語レベル)を行った。 音声の一部を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(音素レベル)では、英単語内の一音素(/m/, /n/, /l/, /r/)を削除し、そこに雑音を挿入した。音声の全体を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(単語レベル)では、英単語の音声全体を一定の短い時間区間に切り分けて、その一つ一つを時間軸方向に反転させ、再度連結させた「時間反転音声」を作成した。 実験の結果、母語話者も第二言語習得者も、崩れた音声を知覚上で修復して聞いていることがわかった。例えば、音声の一部を削除して雑音を挿入した場合は、削除された音声が、知覚上で修復され、はっきりと聴取された。また、「削除された鼻音(/m/, /n/)」は、「削除された流音(/l/, /r/)」よりも、はっきりと知覚された。更に、音声全体を一定の時間区間に切り分けて、その一つ一つを反転し、連結させた場合も、その一つ一つの時間反転区間が短いと、音声の明瞭度が保たれた。ただし、母語話者と第二言語習得者の音韻修復力には大きな差があり、言語習熟度が高いほど、崩れた音声が修復されやすいと考えられる。 翻って、英語教育の観点から音韻修復を考えると、英語の語彙や表現を、「音声と共に」学ぶ重要性が示唆される。多様な英語の発音を公共放送で聞くなど、音韻修復の練習をする大切さも示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究は、当初の計画通り、おおむね順調に進展している。平成27年度は、日本学術振興会に提出済みの年次計画に沿って、日本人の英語学習者(第二言語習得者)を対象に、音素・単語レベルで音韻修復の実験を行った。音素レベルでの音韻修復実験では、単語内の一音素を削除して雑音を挿入し、削除された音素が知覚上で修復されて聞こえるかを調べた。単語レベルでの音韻修復実験では、単語全体を一定の時間区間に切り分け、その一つ一つを時間軸方向に反転させ、再度連結した「時間反転音声」を用意し、単語全体が知覚上で修復されて聞こえるかを調べた。 実験結果から、英語音声の一部・全体が崩れた場合は、音響的なボトムアップ処理と言語的なトップダウン処理を組み合わせて、音声が修復されることがわかった。また、母語話者と第二言語習得者は、音響的なボトムアップ処理においては、同じような知覚処理を見せるが、言語的なトップダウン処理においては、異なった知覚処理を見せることがわかってきた。即ち、音響的なボトムアップ処理には、言語習熟度は介在しないが、言語的なトップダウン処理には、言語習熟度が大きく関与すると考えられる。 平成27年度の研究結果は、前年度(平成26年度)に行った英語母語話者の実験結果と対比させる形で論文に纏め、国際ジャーナル誌に投稿し、更に、国際学会でも口頭発表とポスター発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、日本学術振興会に提出済みの年次計画の通り、「音声の全体を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(文レベル)」を行う予定である。同時に、博士課程の1年目、2年目の実験結果と対比させながら分析を行い、博士論文の執筆や、研究結果の公表を行う予定である。 平成28年度に計画している「音声の全体を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(文レベル)」では、英語音声全体(英文)を一定の短い時間区間に切り分けて、その一つ一つを時間軸方向に反転させ、再度連結させた「時間反転音声」を作成する。時間反転音声(物理的には元の音響信号の時間配列が存在しない音声)が、どのように知覚上で修復され、聞こえるのかについて更に詳しく調べていく。特に、音素・単語・文コンテクストなどの情報が、どのように音韻修復に関わっているのかを検討したい。更に、英語母語話者と第二言語習得者の音韻修復における共通点と相違点も明らかにしていきたい。そして、その結果は、博士論文やジャーナル論文として纏めると共に、国際学会でも発表していきたい。
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Research Products
(6 results)