2016 Fiscal Year Annual Research Report
社会相互作用の機序とその障害の理解のための包括的アプローチ
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15J00067
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
磯村 朋子 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 表情模倣 / EMG / 乳児 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会相互作用の基盤となるメカニズムを探るため、「表情模倣」に着目し、研究を進めている。昨年度は、他者の表情観察時の乳児の表情筋活動を計測することで表情模倣の初期発達について調べ、遅くとも5か月齢までに表情模倣反応が見られることが明らかになった。本結果は、今年度12月にRoyal Society Proceedings B誌にて掲載・発表された。 今年度は、表情模倣が高次の社会認知機能の発達にどのように関与しているのかという疑問に着目した。視覚的な視点取得(他者が見ているものは自分が見ているものとは異なることへの理解)が出来るようになると言われている18~24ヶ月齢に焦点をあて、表情模倣の反応性と、他者視点に基づいた行為の意図理解についてそれぞれ調べ、それらの関連性を分析した。表情模倣については、昨年度と同様に、女性が笑っている映像(laugh)や泣いている映像(cry)を見ている際の幼児の表情筋(口角を引き上げる頬部の筋肉〈laughに対応〉と、眉をしかめる眉上部の筋肉〈cryに対応〉)の活動を表面筋電図によって計測した。視点取得に関しては、女性がおもちゃにむかって手を伸ばすような映像を作成し、それを見ている際の幼児の視線を計測することで、他者視点に基づいて相手の行為を予測できているかどうかを判断した。それらを合わせて分析した結果、相手の視点に基づいた行為予測の成績がよい幼児群では、同成績が悪い幼児群に比べ、他者の表情に対して模倣反応を示しやすいことがわかった。これらの結果から、表情模倣は視点取得や意図理解などの社会認知機能の発達と正の相関性をもつことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究成果を原著論文として国際学術誌にて発表することができた。また、今年度に入って始めた実験も結果をまとめ現在論文を準備している段階であり、おおむね計画通りに進めることが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回表情模倣と他者視点取得との相互関係を明らかにしたが、この関係性が視点取得の機能がまさに獲得される過程である幼児期特有のものなのか、成人においても同様の関係性を維持しているのかを検証する。また、今後は「自己」の形成過程と模倣発達の関係性に焦点を当てて研究に取り組む予定である。
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