2015 Fiscal Year Annual Research Report
気泡注入アクティブ制御による新しい乱流摩擦抵抗低減技術の開発
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15J00147
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
朴 炫珍 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 乱流制御 / 抵抗低減 / 気泡 |
Outline of Annual Research Achievements |
船舶における空気潤滑法の効率向上が本研究の目的である.本研究では気泡注入を周期的に行うことで人工的なボイド波を乱流境界層に与えて空気潤滑法の抵抗低減を促進させる反復気泡注入(Repetitive bubble injection, RBI)を提唱し,その実用性の立証に注力した.以下に2015年度の成果について報告する. 1. RBIによる抵抗低減の性能評価,および抵抗低減促進メカニズム:RBIの性能を評価するために,水平チャネルにせん断応力センサーを設置し,流体と壁面の摩擦抵抗を直接計測した.計測結果,従来の連続気泡注入法おいては低ボイド率で抵抗が増加し,一定ボイド率を超えてから抵抗が減少し始めた.一方,RBIにおいては,RBIにより局所的に高いボイド率を持つ気泡群が生成され,平均ボイド率が低くても抵抗低減効果が維持された.また,RBIを用いることで2-3%の抵抗低減が追加に得られた.気泡群周辺の液相の流れを計測した結果,RBIにより周期的に通過する気泡群が壁面付近に存在する縦渦を壁面から剥がし,気泡群の下部に潜らせて,大きな抵抗発生させる縦渦の破裂を抑制する.この縦渦の破裂を抑制により,RBIでは追加の抵抗低減が発生することがわかった. 2. エコーグラフィーによる気泡検出法:RBIを効率的に使用するためには,移流する気泡群を計測し,移流状況に合わせてRBIのパラメータを調整する必要がある.実験室内の実験では,気泡計側に光学可視化を多く利用しているが,船舶など実環境において光学可視化は不向きである.そのため,計測手法として,実環境で使用を考慮した高い耐久性持つエコーグラフィーに注目した.超音波の数値解析を用いて壁面付近を流れる気泡を検知できる高い時・空間分解能を持つエコーグラフィー手法を設計し,チャネル流れと模型船にそれぞれ適用し実際に移流する気泡の様子が観測可能なことを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
乱流摩擦抵抗を低減させるための気泡制御について二つの課題に取り組み,いずれも世界初となる重要な発見ならびに開発を達成した.間欠的気泡注入法(Repetitive bubble injection, RBI)はこれまでのパッシブな抵抗低減から脱却し,二相流の流れの非定常性を機能活用するという発想で,大きな効果を得た.さらにそれを検定する超音波パルスエコーグラフィー技術を開発した.また,開発したエコーグラフィーのデモ器を製作し,それを模型船舶に装着して,気泡流の計測が正常に作動することを確認した.これらは成果は評価の高い国際学術誌,International Journal of Multiphase FlowとMeasurement Science & Technologyにそれぞれ掲載された.RBIによる摩擦抵抗低減促進のメカニズムが究明され,注入した気泡を測定できる計測器が開発されたため,これからRBIによる抵抗低減法のオンライン制御やプレディターミナント制御を可能になる.これらの2015年度の成果は初期の計画より大きいものである.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに開発したエコーグラフィーにより,船底に設置した計測部の気泡群の様子は確認できるが,システム系全体での気泡群の移流様子はわからない.そのため,計測部における気泡群の様子から,系全体における気泡群の移流様子を予測する必要がある.予測モデルを作るため,水平チャネルにRBIを適用し,チャネル数箇所における移流様子を高い時間・空間分解能を持つレーザ気泡感知センサーを用いて,統計的に調べる.気泡群の移流は,個々の気泡のサイズなどによって異なる移流速度や移流する最中に発生する気泡の合体・分列などにより,一般的に移流現象を表現するために使用する移流拡散方程式では表現できないことが予想される.そのため,これらの現象を簡単な数学モデルであるKdV-B(Korteweg-de Vries-Burgers)方程式を用いて表現することを試みる.KdV-B方程式は二流体モデルを用いた流動層のボイド波を表現する際に多く用いられる.また,移流項と拡散項以外に非線形移流項と分散項を持っているため,気泡群の移流を表現できると思われる. KdV-B方程式で大まかな気泡群の移流方程式を立てることは可能だとしても,その精度はあまり高くないと予想される.産業的には十分な精度があるとしても,物理現象を理解するには,その精度が不足して可能性がある.そのため,来年度には気泡挙動について長年研究をしてきたFranceのInstitute of Fluid Mechanics of Toulouse (IMFT)との国際共同研究を計画している.IMFTに約一ヶ月間滞在しながら,現地での設備を用いて気泡の移流挙動について調べる.
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Research Products
(9 results)