2015 Fiscal Year Annual Research Report
血管構造の高速モールディングによる三次元骨組織の構築
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15J00200
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
景山 達斗 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 血管 / 電気化学細胞脱離 / 間葉系幹細胞 / 骨芽細胞 / マイクロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的な少子高齢化に伴い、不可逆性の骨疾患が加速的に増加している。不可逆性の骨不全に対する既存の治療戦略としては、自家骨移植や人工骨移植がある。しかし、自家骨は採取できる量が限られており、また採骨部位に残る痛みや合併症などのリスクもある。したがって、大量に作り出せる人工骨の開発が求められているが、現状では自家骨と比較すると骨再生の効率が圧倒的に低く、比較的小さな骨欠損部しか修復できない。移植した人工骨は、骨の細胞による吸収・再形成という「リモデリング」のプロセスを通して損傷部位を修復するが、既存の人工骨にはこのリモデリングに関わる骨細胞をリクルートするための血管構造がないことが最大の問題である。生体外で血管構造を有する厚みのある組織を作製するには、如何に素早く血管構造をその内部に作製し、培養液の送液を開始できるのかが重要となる。ここではまず、血管構造の作製プロセスそのものに要する時間が重要である。なぜなら、これに長い時間を要すると培養開始時点ですでに細胞は低酸素に陥り、送液開始時に活性酸素による重大な障害を受けることとなるからである。このような観点から、我々は独自の血管構造作製プロセスを開発した。これは、独自の電気化学細胞脱離技術を用いることで、内表面を血管内皮細胞で覆われた血管を短時間のプロセスで作製し、素早く培養液の送液を開始する技術である。さらに、この技術を用いて、血管導入骨組織の生体外作製技術を開発した。骨芽細胞が生体外培養で自発的に骨基質を沈着させた骨芽細胞包埋石灰化ビーズをハイドロゲル内に血管内皮細胞とともに包埋し、血管構造を配置した。送液培養中に血管内皮細胞が骨芽細胞包埋石灰化ビーズ周囲でさらに細かい血管網を伸長することで、密な血管網を有する骨様組織が構築できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた研究計画を遂行し、「骨芽細胞包埋石灰化ビーズの作製」、「オステオン構造の自発的形成の誘導」という課題をクリアした。加えて、初年度の時点で計画を前倒しして、二年目の課題である「小動物実験による骨再生能の検証」に取り組んでおり、作製した骨組織の治療効果が示されつつある。これにより、一般的に作製が困難と言われている血管導入骨組織作製の基盤技術を確立する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目で確立した血管導入骨組織構築技術を利用して、三次元骨組織構築に取り組む。すでに開発した流動型自動培養装置を用いて、骨基質の産生に適した加圧培養条件を見出し、成熟骨組織の形成を誘導する。そして、100本以上の血管構造を有するcm3スケールの骨組織へのスケールアップを図る。さらに、マウスの大腿骨に5 mmから数cm程度の骨欠損を形成し、上記にて作製した培養骨を移植し、本研究で確立する技術が骨の再生医療に効果的であることを実証する。
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Research Products
(5 results)