2016 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合性2次元超分子構造をテンプレートとしたキラルな結晶性金属ナノシートの構築
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15J00237
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐々木 俊之 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 金属ナノシート / テンプレート / キラリティ / 超分子 / 有機塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属由来の電子特性と二次元構造に起因して、金属ナノシートは特異な物性を示すことが知られている。そのため、触媒や光電子材料など機能性材料の開発の点から注目を集めている。その作成法としては、層状結晶の剥離や有機分子の配位を利用したものが知られている。本研究ではより多様な金属ナノシート創出のため、単分子ではなく超分子の設計による金属ナノシートの構築を試みた。これまでに得られているカルボン酸アンモニウム塩が形成する2次元に広がった水素結合ネットワークから形成されるキラルなシート型超分子(分子集合体)構造に着目し、この表面を金属配位能を持つ分子で修飾することで、金属ナノシート構築のテンプレートとして利用する。これにより、様々な金属を用いたキラルな結晶性金属ナノシートの作製を目指している。 採用第2年目の成果を以下に示す。 1.構造解析法として、粉末X線回折からの結晶構造解析の手法を学んだ。実際に、低分子ゲル化剤として知られている長鎖アルキル基を持つ分子の結晶構造解析に成功した。この手法により、良質な単結晶の作製が困難なサンプルの構造解析が可能となる。 2.結晶化時に金属溶液と2次元超分子テンプレートを形成する有機塩溶液を混合した結果、結晶性の固体が得られた。ほとんどのものでは金属塩単体のピークパターンが観測されたが、一部のものでは金属塩や有機塩単体のものとは異なるピークパターンが得られた。 3.長鎖アルキル基を持たないカルボン酸とアミンの組み合わせによる有機塩を用いて結晶構造解析を行った結果、確率は高くないが2次元超分子構造が形成されることがわかった。このことから、2次元超分子構造を形成するには、長鎖アルキル基間の相互作用だけでなくその他の要因も考慮する必要があるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピコリルアミン類と長鎖アルキルカルボン酸および長鎖アルキルアミンとニコチン酸類を用いて結晶を作製した場合、ほとんどのもので良質な単結晶は得られなかった。しかし、粉末X線回折測定によって一部の有機塩では結晶性が確認された。そこで、これらの有機塩結晶の構造解析を行うため、粉末X線回折からの結晶構造解析法を専門家のもとで学んだ。この手法を用いることで、長鎖アルキル鎖を持つ低分子ゲル化剤として用いられている分子について結晶構造解析に成功した。これは、ゲル化の機構解明につながる成果となっている。自身の扱っている系に関しては粉末X線回折のピークがブロード化しているため、結晶構造解析は困難である。そこで現在は、より結晶性が高く、シャープな回折ピークを示す結晶サンプルの作製を行っている。 また、長鎖アルキル基をもたない分子においても2次元超分子構造の形成を確認できた。これは、長鎖アルキル基を導入した場合に結晶化しにくいという問題を回避できる可能性を示す結果である。一方で、ほとんどの有機塩で1次元の水素結合ネットワークによるカラム型超分子が形成されていた。その構造を詳細にしらべたところ、2回らせんを形成してキラリティをもつものと反転中心をもちキラリティをもたないものが確認できた。分子構造設計によってキラリティ制御を行ううえで、これらのキラリティの有無の要因を明らかにすることは重要である。現在までに、CH/pi相互作用の関与を確認しており、シミュレーションの結果を組み合わせて評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
金属配位部位を表面にもった2次元超分子を構築しその構造を評価するため、より高い結晶性をもつ持った有機塩を合成する。この目的のため、ジアミンもしくはジカルボン酸を導入する。水素結合部位を増やすことで、2次元超分子構造を形成した際の水素結合が補強される。そのため、構造が安定化されて結晶化能の向上が期待できる。さらに、パーフルオロアルキル基を導入することでフッ素間相互作用と水素結合能を向上させ、より強固な2次元超分子構造を構築する。これにより、金属配位部位をもったテンプレートとなる2次元超分子構造形成が可能となる。得られた結晶について原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡などを用いて表面分析を行い、金属イオン溶液への浸漬によって金属ナノシートのテンプレートとしての機能を評価する。また、これまでに得られた結晶化時に金属イオンを導入して作製した結晶については、良質な単結晶作製条件の探索と結晶構造解析を行う。 これと並行して、効率的に2次元超分子構造を構築するために長鎖アルキル基以外の2次元超分子構造構築要因の探索を行う。より具体的には、アルキル鎖をもたないカルボン酸アンモニウム塩、特にベンジルアミン誘導体と安息香酸誘導体との塩、についても結晶構造解析を行い、超分子構造を評価する。このとき、置換基の位置や種類による超分子構造の変化とキラリティの有無についても詳細に調査する。
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Remarks |
個人で作成した研究紹介等のwebページ
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Research Products
(8 results)