2015 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ血管炎症候群は起こるか―血管内皮・周皮細胞機能と二次的遺伝子変異に着目して―
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15J00292
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
神田 真聡 北海道大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 疾患特異的iPS細胞 / 大動脈炎症候群 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管炎症候群患者末梢血単核球からセンダイウイルスベクターを用いて、血管炎症候群患者由来のiPS細胞の作製を行った。具体的には、大動脈炎症候群患者2名の末梢血単核球から各3ラインずつ、計6ラインのiPS細胞を樹立した。多分化能の評価として、免疫染色、mRNA発現解析、核型検査、NOD-SCIDマウスを用いた奇形腫形成能を確認した。これらのことから、大動脈炎症候群患者由来のiPS細胞の樹立に成功した。 次に作製したiPS細胞から血管内皮細胞の分化誘導を行った。分化誘導プロトコールはOrlova VV, et al. Nat Protoc. 2014を用いて行った。この分化誘導法は健常人由来iPS細胞では、実際に血管内皮細胞を分化誘導可能であることが確認できていたが、大動脈炎症候群患者由来のiPS細胞では血管内皮細胞を効率よく分化誘導することができなかった。 そこで、次にOrlova VV, et al. Nat Protoc. 2014の血管内皮分化誘導プロトコールを添加するサイトカイン・低分子化合物の量、添加時期などを一部変更し、分化誘導効率の改善を試みたが、めざましい改善は認められなかった。また、その他の既報告の論文などを各種調査し、古典的なOP-9を用いた分化誘導法(Sone, M. et al. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2007)や胚様体を用いた誘導方法(Nakahara M, et al. Cloning and Stem Cells 2009)などの誘導法を適宜応用しながら血管内皮細胞の誘導を試みた。しかし、血管内皮細胞は、少量であれば誘導されるが、機能解析実験が可能なほどの高効率で、血管内皮細胞を誘導することは困難であった。 現在独自の方法での血管内皮細胞の誘導プロトコールを開発している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
健常人iPS細胞での実験では血管内皮細胞の誘導が可能であったが、患者由来のiPS細胞で同様の実験を行った際に、効率よく血管内皮細胞を誘導することができず、その後の実験をすすめるために大幅に研究計画を修正する必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
患者由来iPS細胞で血管内皮細胞の誘導効率が十分に得られない原因をiPS細胞の質の問題、分化誘導プロトコールの問題、実験手技の問題に分けて検討し、一つずつ条件改善を行っていった。 最終的に分化誘導プロトコールを改めて構築するのが最も有効であろうという結論となり、現在、段階的に分化誘導プロトコールを見直して独自の誘導方法を開発中である。
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