2015 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-フッ素結合の自在変換を基軸とした有機フッ素化合物の効率的合成
Project/Area Number |
15J00293
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
奥田 靖浩 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 有機フッ素化合物 / ニッケル触媒 / フッ化アシル / 脱カルボニル化 / 鈴木-宮浦カップリング / アルキル化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遷移金属錯体による有機フッ素化合物の炭素-フッ素結合の変換反応を基軸とした新規触媒反応の開発について研究をおこなった。従来のフッ化アシルの変換反応としては、ニッケル触媒によるカルボニル基を保持した非対称ケトンの合成反応が知られているが、より安価な酸塩化物やエステルなどでも同様の反応が進行することが知られており、実用的な反応であるとは言えない。そこで本研究では、B-アルキル型の鈴木-宮浦カップリングと組み合わせることによって、フッ化アシルに選択的に反応する脱カルボニル化を経由したアルキル化反応を見出すことに成功した。 まず本研究では、フッ化アシルの炭素-フッ素結合の酸化的付加により生じるアシル(フルオロ)ニッケル錯体からの不均化反応が速やかに進行することが課題であることを見出し、ルイス酸性を有する有機ホウ素化合物と組み合わせることによって、不均化反応を抑制することに成功した。さらに、従来の鈴木-宮浦カップリングによるアルキル化反応では、アルキル基のトランスメタル化速度が遅いため、反応が進行しないことが多かったが、ルイス酸性を有するトリアルキルボランを用いることによって、反応が効率的に進行することが分かった。また、反応は二座のリン配位子を用いることによって脱カルボニル化が選択的に進行する一方で、電子供与性の高い N-ヘテロサイクリックカルベン型配位子を用いた場合にはカルボニル基を保持したアルキル化反応が選択的に進行することが分かった。このような配位子の電子的効果によるカルボニル基の保持/脱離を制御する反応はこれまでに報告例が無く、非常に重要な研究成果であると考えている。さらに、天然物合成や薬理活性物質合成などにおいて幅広く応用が期待できる脱カルボニル化を伴ったメチル化反応についても、トリメチルボロシキンを用いることによって進行することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の年次計画一年目では、ニッケル錯体によるフッ化アシルの炭素-フッ素結合の開裂反応、有機不飽和分子による移動挿入反応、還元的脱離反応を量論反応によって検討することを目標としていた。結果として今年度は、より新規性の高い炭素-フッ素結合の開裂反応、アルキル基のトランスメタル化、脱カルボニル化、還元的脱離といった一連の反応を触媒的におこなうことに既に成功している。加えて、本研究ではフッ化アシルの変換反応に関して反応条件の最適化から、基質適用範囲の検討まで既に完了しており、国内外の学会発表および学術論文の投稿準備段階である。研究開始一年目の時点では、フッ化アシルの変換反応に関する反応条件の最適化までを目標に設定していたことを考えると、本研究は当初の研究計画以上に進展している。 更に、これまでの研究において、有機フッ素化合物の触媒的変換反応の開発は容易では無いことを考えると、本研究一年間で触媒反応の開発が達成できたことは、注目すべき研究の進展であると考えている。今後の研究計画としては、炭素-フッ素結合の生成を達成することによって、当初の計画通り、触媒的カルボフルオロ化が達成できるだけでなく、本研究において既に見出している反応を応用することによって、有機フッ素化合物の触媒的アルキル化反応の開発、およびカルボニル化合物の選択的変換反応の開発をおこなう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究計画通り炭素-フッ素結合の生成反応について開発をおこなう。つまり、ニッケル錯体によって炭素-フッ素結合を開裂し、変換反応が可能であることは既に見出しているため、今後は移動挿入、還元的脱離について検討することによって当初の研究計画を達成できるのではないかと考えている。 更に、本研究によって見出したフッ化アシルの脱カルボニル化を経由したアルキル化反応についても、更に応用展開をおこなっていきたいと考えている。つまり、脱カルボニル化を経由したアルキル基の導入反応は、これまでに報告例が無く、非常に注目すべき研究成果であるため、基質の適用範囲の拡大、天然物や薬理活性物質合成への応用などにも展開していきたいと考えている。さらに、ごく最近ではフッ化アシルの炭素-フッ素結合が開裂した後も、カルボニル基が脱離しない遷移金属錯体の開発についても研究をおこなっているので、これらのフッ化アシルの変換反応に関して詳細な基礎研究をおこなっていきたい。 以上の研究計画を踏まえて考えると、2016年7月頃まで炭素-フッ素結合の生成反応に関する量論反応をおこない、どのような基質において反応が適用出来るかを検討する。量論反応が達成できれば、2017年1月頃までに触媒反応への応用をおこない、2017年3月までに論文投稿が出来るまで準備をおこないたいと考えている。それと並行して、現時点で達成しているフッ化アシルの脱カルボニル化を経由したアルキル化反応については、2016年5月頃までに論文投稿を完了したいと考えている。その後、関連した応用反応についても順次検討をおこなっていきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)