2015 Fiscal Year Annual Research Report
メタ言語能力が英語学習における動機づけ・学習方略・習熟度に与える影響について
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15J00370
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 美加 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | メタ言語能力 / 英語学習意欲 / 英語学習動機 / 英語学習方略 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタ言語能力と外国語(英語)学習における個人差変数との関連を検討することを目的として、中学一年生を対象に4月・5月にメタ言語能力テスト、および学習意欲・動機づけを測定する質問紙調査を実施した(Time1)。分析の結果、体系的な英語学習開始時においてはメタ言語能力と学習意欲・動機づけの間には明確な関連性がないということが明らかになった。参考としての2年生・3年生のデータにおいては、メタ言語能力と動機づけとの間には統計的に有意な相関がみられたことから、学習が進むにつれてメタ言語能力の影響が強くなってくる可能性あると考えられる。Time2以降、外国語学習に対するより明確なメタ言語能力の影響がみられることが示唆される。 10月・11月にかけてTime2の調査として、Time1の調査項目に学習方略を加えてデータを収集した。また、修士論文の研究結果と上記のTime1の結果をもとに、メタ言語能力テストを開発した。先行研究における日本語メタ言語能力テストは信頼性・妥当性の検証が不十分なまま採用されているものがほとんどであった。しかし、本研究では信頼性・妥当性を実証的に検討しつつメタ言語能力テスト作成を試みており、その点で国内の今後のメタ言語能力研究に大きく貢献するものだと考えられる。 さらに実践研究では、言語学の基礎的理論の教授が中学生の個人差変数に与える影響を明らかにした。メタ言語能力、および言語に対する態度のうちの言語学習に対する有効性の認知に関して事後測定時に統計的に有意な上昇がみとめられた。通常、理論言語学は大学以上でしか扱われないが、言語学の教授は中学生の言語学習にとっても良い効果が得られるということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、メタ言語能力と外国語学習における個人差変数との関連を検討する縦断研究を開始するとともに、メタ言語知識の教示がメタ言語能力を含む言語学習における個人差変数に与える影響について検討し、論文にまとめた。 4月・5月にメタ言語能力テスト、および学習意欲・動機づけを測定する質問紙調査を実施し(Time1)、10月・11月にかけてTime2の調査として、Time1の調査項目に学習方略を加えてデータを収集した。習熟度に関しては、調査協力校3校が共通して受験している全国模試の結果を開示してもらい、データを収集する予定であったが、その手続きが当初の予定よりも遅れている。しかし、今月中にはデータが開示される予定であり、研究遂行上大きな問題にはなっていない。 また、メタ言語能力テスト開発についてThe 7th Asian Conference on Educationで口頭発表し、論文としてまとめたものをCogent Educationという学術雑誌に投稿中である。メタ言語知識の教示に関する実践研究については、The 8th SELF Biennial International Conference、およびThe 41st Annual International Conference on Language Teaching and Learning & Educational Materials Exhibitionで成果を発表するとともに、論文にまとめたものをJALT Conference Proceedingsに投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
4月・5月中に縦断研究のTime3を行う(メタ言語能力テスト、習熟度テスト、動機づけと学習方略の質問紙調査)。各変数に対するメタ言語能力(Time1)の影響を相関分析・回帰分析により明らかにするとともに、各変数の発達の相互作用を検討する。なお、質的調査の対象であった調査協力者は今後協力が難しいということであったので、他の協力者を募っているところである。また、調査協力校3校のうち、一校のみ、担当者が変わったことで今後は英語の成績(習熟度)の開示ができないという申し出があった。しかしながら、動機づけや学習方略など他の項目に関しては継続して協力が得られる予定である。習熟度を含めた検討に関しては、サンプル数は減ってしまうものの、統計的分析上の問題はないと思われる。 加えて、研究計画の変更として、出産・育児のため8月以降研究を中断する予定である。しかし、本研究の目的上、データ収集の時期をずらすことは難しいため、計画通り10月・11月にTime4のデータの収集だけは行うこととし、分析や成果の発表などは中断期間が終了してから行うこととする。具体的には、「メタ言語能力(Time1)→学習方略使用(Time2)→習熟度(Time3)→動機づけの形成(Time4)」というモデルを作成し、共分散構造分析を用いてメタ言語能力の持つ因果的役割を検証する。 4時点すべての分析が終了した時点で、量的データと質的データを統合し、メタ言語能力の英語学習における因果的影響を検証する。これまでに得られた研究知見を総括し、博士論文を執筆する。
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Research Products
(8 results)