2015 Fiscal Year Annual Research Report
動詞派生前置詞の共時的・通時的記述研究―文法化への意味論的アプローチ―
Project/Area Number |
15J00373
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 智昭 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 文法化 / 動詞派生前置詞 / 脱範疇化 / 懸垂分詞 / 言語変化 / 記述研究 / 前置詞 / 歴史言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、通時的には語彙項目(内容語)に属する動詞に由来し、文法項目(機能語)の前置詞へと文法化した現象である「動詞派生前置詞」の共時的・通時的記述を行うことを目的とする。以下、研究計画に記した (i) 個別事例の分析、(ii) 現象全般の包括的記述、に関し、今年度の研究実績を示す。 まず (i) に関して、共時的観点から、British National Corpus (BNC) のデータを用いて「除外」の意味を表す頻度の低い前置詞excluding, saving, barringをジャンル・レジスターとの関係に基づき分析した。これらの前置詞は、書き言葉において使用される傾向があり、文法化の程度が異なることを指摘した。通時的観点からは、Oxford English Dictionary (OED), Corpus of Contemporary English (COHA) のデータにより動詞派生前置詞barringの発達を分析した。barringの前置詞的用法はOEDの初例から観察されるが、ともに分詞に由来するconsidering, concerningと同じ文法化の経路を辿ったと仮定すれば、特に19世紀後半から20世紀前半の時期にかけて文法化が進行し、前置詞としての性質が強くなったと考察した。 次に (ii) に関しては、先行研究・辞書から収集した37例を対象に、Emonds (1976) の前置詞を識別するテスト(分裂文、強意の副詞rightとの共起可能性)による作例を行った。英語母語話者を対象とした容認度調査を実施し、動詞派生前置詞の前置詞性 (prepositionality) を算出した。結果、past, during, following, starting, regarding, according to, preceding, succeeding, including, pertaining toを除く27例は前置詞性が相対的に低いものと位置づけられた。また、前置詞性の分布から文法化の進行度に段階性がみられることを指摘した。さらに、空間的・時間的意味が前置詞としての典型性に関わる可能性があると考察を行った。 以上に加え、昨年(平成26年)度までに行った研究を論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、今年度は、前置詞性の観点から記述研究を推進することができたと考える。 まず、共時的記述に関して、本研究の開始当初は28種類の動詞派生前置詞を分析の対象としていたが、今年度の文献収集を通して新たに9例を加え、合計37の事例に関して英語母語話者への調査を実施することができた。また、昨年度に行ったジャンル・レジスターとの関係を考慮したconsideringの研究手法を援用し、「除外」の意味を表す動詞派生前置詞へと分析の幅を広げた。 次に、通時的記述に関しては、本研究が行ってきた「脱範疇化のクライン」(cf. Hopper and Traugott 2003: 107; 訳語は、児馬 2001: 74による)に基づく分類をさらに適用させ、barringの通時的発達を分析することによって個別事例の研究を進めた。 以上の成果から、研究目的の実現に向けて、一貫した基準と方針に基づき動詞派生前置詞の分析を着実に進めたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度への方策としては、引き続き (i) 個別事例の分析、(ii) 現象全般の包括的記述、という観点から研究を推進していくこととなるが、特に動詞性の検討を中心に据える予定である。今年度の成果を踏まえ、前置詞性の検討をさらに進めるとともに、共時的には主に動詞性の観点から記述研究を行う。並行して、通時的研究として個別事例を分析していく。事例ごとの文法化のプロセスを比較・対照することにより、歴史的発達と文法化のメカニズムの関係について理論的考察を行う。
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Research Products
(8 results)