2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原菌の感染初期における遺伝子発現調節ネットワークの解明
Project/Area Number |
15J00381
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北出 雄生 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 植物病原菌 / 糸状菌 / トランスクリプトーム / 転写因子 / 付着器 / MAPK / RNAseq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は植物病原性糸状菌の感染過程における遺伝子発現調節ネットワークの構造を明らかにすることである。まず、感染過程の各段階において発現調節を受けている遺伝子群の同定を第一段階とした。課題申請当初の計画では、付着器形成過程と穿入過程において顕著な異常を示すそれぞれCHK1(MAPK)およびSTE12(転写因子)の遺伝子破壊株のRNAseq解析により、初年度に第一段階が完了する予定であった。しかし、本研究課題の供試菌であるトウモロコシごま葉枯病菌(Bipolaris maydis)の野生株ならびに遺伝子破壊株は、ガラス表面上では感染行動が同調しない点など、当初想定していない問題点が明らかとなった。そのため、RNA抽出用サンプル調整にむけた培養条件等の再検討を入念に行った。その結果、ガラス表面上から宿主植物表面上に条件変更することにより、諸問題を回避できることが分かった。これにより、次年度初頭にRNAseq解析を実施するめどが立った。 また、本経路関連因子の1つ、CLA4の遺伝子破壊株から復帰突然変異株を作出・単離することに成功した。復帰株では破壊株の細胞極性異常から回復していることが確認された。変異点の同定を目指した全ゲノムシークエンス解析を現在進行中である。 また、MAPKの蛍光標識ならびにMAPKKの恒常活性化にも成功し、遺伝子発現調節ネットワーク解明に向けた基盤整備は着実に進行した。 以上のように、一部に遅延は生じたものの、全体としては着実に進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にMAPK経路関連の各変異株のRNAseq解析が完了する予定であったが、ガラス面上における本菌の感染行動の同調性が低い等の問題が生じたため、サンプル調整条件の再検討を行った。その結果、宿主植物片上への変更等により問題点は解決し、来年度初頭にRNAseq解析を実施するめどが立った。 また、本経路関連因子の遺伝子破壊株の1つから復帰突然変異株を作出することに成功した。復帰株は破壊株の細胞極性異常から回復していることが確認された。変異点の同定を目指した全ゲノムシークエンス解析を現在行っている。また、MAPKの蛍光標識ならびにMAPKKの恒常活性化にも成功し、遺伝子発現調節ネットワーク解明に向けた基盤整備は着実に進行した。 以上のように、一部に遅延は生じたものの、全体としては着実に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一段階であるRNAseq解析を初年度に実施することができなかったが、すでに当年度中に問題点は解決済みであり、次年度初頭にRNAseq解析を実施できる見込みである。以降の研究計画に大きな変更はなく、解読が完了し次第データ解析を実施し、目的としている遺伝子群のリストを得る。各遺伝子についてリアルタイムPCRによる発現変動の確認、遺伝子破壊株の病原性試験を実施する。また、各遺伝子のプロモーター領域の多重比較や、他菌種における転写因子結合配列データベースとの照合により、感染過程に遺伝子発現を調節している転写因子の同定を試みる。
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Research Products
(1 results)