2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原菌の感染初期における遺伝子発現調節ネットワークの解明
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15J00381
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北出 雄生 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 植物病原菌 / 糸状菌 / シグナル伝達 / MAPK / 付着器 / 極性 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
博士論文の早期完成を優先するため、予定を変更した。前年度に引き続き、CHK1経路の推定上流因子CLA4に重点を置き研究を進行した。まず、CLA4遺伝子の破壊により形態形成ならびに細胞極性に異常が生じることに加え、CLA4が菌糸先端に局在することを示した。本成果について、日本菌学会第60回大会においてポスター発表を行い、学生優秀発表賞を受賞した(業績リスト参照)。次年度に英文誌へ投稿するため、現在、論文執筆を行っている。また、前年度にCLA4遺伝子破壊株から取得した復帰突然変異株の全ゲノム解析の結果、復帰株特有のSNPは3361か所であった。さらなる絞り込みの結果、30遺伝子が候補として残った。それらの中には、キネシン軽鎖やGDP/GTP交換タンパク質(GEF)など、細胞極性との関連性が示唆されるタンパク質をコードする遺伝子が存在していた。これらの領域のシークエンス解析の結果、変異が確認された3遺伝子を最有力候補とし、さらに解析を進める予定である。 次に候補遺伝子が原因遺伝子であることを遺伝学的に証明するための準備を行った。復帰株は野生株との交配能を完全に欠失しており、遺伝解析は不可能であった。そこで、復帰株にCLA4遺伝子を再導入した菌株を作出した。再導入株3株をそれぞれ野生株と交配したところ、その子孫株は全て野生型の形質を示したため、遺伝解析は不可能であった。3株ともCLA4遺伝子周辺にベクターが組み込まれたと推測された。そこで、遺伝解析が可能な異所組換え株の作出を目指した形質転換実験を行っている。 また、CLA4の推定相互作用因子の網羅的な遺伝子破壊株作出を実施した。その一部で病原性の低下など興味深い形質を示したものがあり、今後解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
博士論文の早期完成を優先することとし、研究計画を変更した。CLA4の機能解析については着実に進行し、その成果については次年度の投稿を予定し、現在論文執筆している段階である。また、前年度にCLA4遺伝子破壊株から取得した復帰突然変異株の全ゲノム解析に関しては、原因遺伝子の有力候補として3遺伝子まで絞り込んだ。これらについては当初の予定よりも進行している。次に原因遺伝子であることを遺伝学的に証明するための準備を行った。これについては次年度以降の実施を予定していたが、優先順位を再検討した結果、予定を繰り上げて本年度に実施することとした。復帰株ならびに再導入株は遺伝解析が不可能であったため、遺伝解析可能な異所組換え株の作出に着手するなど、遺伝学的証明に向けた基盤整備も進行した。また、CLA4の推定相互作用因子の網羅的な遺伝子破壊株作出等の諸実験により、本研究テーマの新たな展開が広がりつつある。以上より、研究活動全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CLA4の機能解析については論文執筆を現在進行中で、次年度の投稿を予定している。復帰突然変異株の原因遺伝子の同定については、CLA4異所組換え株の作出を最優先で行う予定である。異所組換え株をCLA4遺伝子破壊株と交配し、破壊型と復帰型の表現型を示す子孫株のシークエンス解析を行い、表現型と連鎖する候補遺伝子を探す。その遺伝子の相補試験や破壊試験等により、原因遺伝子であることの完全な証明を実施する予定である。また、CLA4の推定相互作用因子の遺伝子破壊株の解析を実施する予定である。
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Research Products
(1 results)