2015 Fiscal Year Annual Research Report
単調欠測データに対する平均ベクトル及び分散共分散行列に関する検定法の開発
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15J00414
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
八木 文香 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 統計数学 / 統計科学 / 統計理論 / 多変量解析 / 漸近展開 / 尤度比検定 / 欠損データ |
Outline of Annual Research Achievements |
データに欠測が生じた際の統計解析手法について,未解決な問題や整備されていない理論部分があり,その中で「単調欠測」データの解析について,次の2つの研究内容に対して研究成果が得られている. 1. 一般の単調欠測データの下での平均ベクトルの検定,2. 一般の単調欠測データの下での平均ベクトルと分散共分散行列の同時検定. 1について,学会等で発表した内容は次の3つである.(1)1標本問題及び2標本問題における尤度比検定統計量の帰無分布の,線形補間による近似上側パーセント点の提案,(2)1標本問題及び2標本問題における,単調欠測データの下での尤度比から完全データの部分の尤度比を取り出し,その完全データ部分の尤度比をバートレット補正する,近似修正尤度比検定統計量の提案,(3)1標本問題において,単調欠測データの下での尤度比を独立な尤度比に分解し,それぞれをバートレット補正する修正尤度比検定統計量の提案.この中で,(3)はカイ2乗分布への近似精度が非常に良い検定統計量になっている.この内容をテクニカルレポートとしてまとめ,学術雑誌に投稿予定である.(1)に関連する研究成果として,2-stepまたは3-step単調欠測データの下での2標本問題及び多標本問題におけるT2乗型検定統計量に対する研究成果を得ることができ,学術雑誌に掲載している. 2については,1標本問題,2標本問題及び多標本問題における一般の単調欠測データの下での尤度比を導出するとともに,次の2つの方法により近似修正尤度比検定統計量を提案した. (1)同時検定に対する完全データ部分の尤度比を取り出す方法,(2)分散共分散行列の検定に対する完全データ部分の尤度比を取り出す方法.これら2つの検定統計量の極限分布への収束の仕方や近似精度の評価を,モンテカルロ・シミュレーションにより行った.この結果をテクニカルレポートとしてまとめている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の1の中で(1)と(2)は計画通りの研究成果であり,(3)は研究を実施している中で,国内外の研究者の助言なども受けて,研究計画とは異なる新たに導出できた成果である. 一方,2については,研究計画にある,1標本問題における3-step単調欠測データの下での議論を進めていく中で,表記法を工夫することによって研究計画にはない,一般のk-stepへの拡張を議論することが可能となり,結果を導出することができた.さらに多標本問題への拡張もでき,まとめている. 1の(3)については今後テクニカルレポートとしてまとめ,学術雑誌に投稿する予定である.また2については,すでにテクニカルレポートとしてまとめており,再確認した後,学術雑誌に投稿予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,平均ベクトルの検定に関しては,1標本問題において,一般の単調欠測データの下でのバートレット補正による修正尤度比検定統計量に関する研究成果を得てきた.一方,平均ベクトルと分散共分散共分散行列の同時検定については,多標本問題における一般の単調欠測データの下で,完全データ部分をバートレット補正する,近似修正尤度比検定統計量を提案してきた. これに引き続き,平成28年度は,一般の単調欠測データの下で,次の3つの課題に取り組む. (1)2標本問題及び多標本問題における平均ベクトルの検定に対する修正尤度比検定統計量の導出,(2)1標本問題,2標本問題及び多標本問題における尤度比検定統計量の帰無分布に対する高次の項までの漸近展開,(3)1標本問題,2標本問題及び多標本問題における同時検定に対する修正尤度比検定統計量の導出. 特に,(1),(2)に関連しては,T2乗型検定統計量や多変量正規性検定統計量等についても同様の議論ができる可能性があり,研究課題に含めて進めていく.また,(3)については平均ベクトルの検定の場合と同様の方法により,導出を試みる. これらの課題を解決することによって,これまでに提案したものより近似精度の良い検定統計量や近似上側パーセント点の提案が可能となる.また,これらの研究成果は随時,国内外の学会等で発表し,論文としてまとめていく.これまでと同様,国内外の研究者から積極的に助言を受け,本研究課題を着実に遂行していく予定である.
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Research Products
(8 results)