2015 Fiscal Year Annual Research Report
外国人学校と地域によるコミュニティ形成過程に関する研究
Project/Area Number |
15J00449
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金南 咲季 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | グローバリゼーション / エスニシティ / 共生 / 外国人学校 / 多文化混淆地域 / コンタクト・ゾーン / 学校間交流 / 公教育と学校選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国人学校と地域社会における様々な主体間の接触の諸相を描き出すことで、「共生」の生成条件・要因を明らかにすることである。特定の社会集団のみでなく、グローリゼーションが進行する地域社会という空間に着目し、その変化の動態を現在進行形で追っていく本研究は、日本社会における「多文化共生」の行方を考えていく上で重要な知見を提示しうる。 初年度の主要な活動は次のとおりである。第一に、ある中学校区に新興の外国人学校が設立されて以来見られるようになった教育実践や課題の変化について、外国人学校や隣接する公立学校2小1中の教員にインタビュー調査を実施した。主な研究成果は「外国人学校の日本の公立学校の相互変容過程―コンタクト・ゾーンにおける教育実践に着目して―」(『教育社会学研究』第98集,2016.5)にまとめた。同論文では、外国人学校を「地域の学校」として捉え直すという理論的示唆と、制度的改変や学校間交流を促進する施策の検討必要性を政策的示唆として提示した。 第二に、同外国人学校と地域社会における学校以外の組織や個人(宗教組織、人権運動団体、福祉施設、地域住民など)との接触にも着目し、両者の関係性や実践の生成や変化についても調査を行った。得られたデータをもとに、都市社会学と国際社会学を中心に展開されてきた二項対立的な議論の止揚の可能性について論じ、その成果を日本社会学会(於早稲田大学,2015,9)にて発表した。現在はデータの補強とともに論文投稿に向けて準備を進めている。 第三に、人々の教育意識が多様化に伴って、近年その数が増加している「外国にルーツをもたない日本人の子どもが外国人学校に通う」という現象に着目し、その入学動機や学校経験について調査を進めている。研究成果は、既に投稿論文にまとめ(現在査読待ち)、2016年6月に異文化間教育学会での発表を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
継続的なフィールド調査を通じて、調査対象となる多岐に渡る個人・組織集団とのラポールの構築を進め、インタビュー調査を計画的に実施することができた。また得られたデータについては、研究概要で述べた複数のサブテーマに沿って分析・考察を進め、それぞれ研究成果にまとめることができた(学会発表:査読有2・無1、論文投稿:査読有1)。また、学会発表や査読のプロセスでは、他の研究者からの有益なコメントを得ることができ、それをもとに次年度以降の研究に向けた調査設計や理論的枠組みの練り直しを行うことができた。 また次年度以降に予定している、海外研究機関での理論や手法の習得・発展や、調査の実施に向けた準備として、受け入れ機関の検討と交渉を進めるとともに、所属学会主催のセミナー等を利用し、海外調査や比較研究の手法に関する情報収集を行った(教育社会学会若手研究セミナー於東京理科大学2016.3)。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の進展に伴い、地域の教育組織が重要な役割を果たしていることが明らかとなり、焦点を当てるべき対象を微調整する必要性がでてきている。その対応策として既に、同組織のへの活動参加を通じた参与観察とともに、類似の組織についての調査研究を行ってきた研究者たちとのネットワーク構築を進めている。今後、こうした対象に関するデータの収集・分析を進めていくことで、当初想定していた枠組みを越えて、より重層的に現象の記述と把握を行うことが期待できる。 また、次年度秋に予定していた海外での調査研究については、受け入れ機関との交渉や調査準備に係る事情から、次年度末あるいは最終年度前期に見送る可能性が濃厚となっている。そのため、延長された準備期間を十分に活用し、国内での調査研究を発展させていくとともに、文献整理や理論・手法の学修を含めて、海外調査に向けた準備を進めていく。
|
Research Products
(4 results)