2016 Fiscal Year Annual Research Report
外国人学校と地域によるコミュニティ形成過程に関する研究
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15J00449
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金南 咲季 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | グローバリゼーション / エスニシティ / 共生 / 外国人学校 / 多文化混交地域 / コンタクト・ゾーン / 学校間交流 / 公教育と学校選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多文化化する地域社会における「共生」の生成や展開の動態を事例をもとに明らかにすることである。具体的にはある外国人学校に焦点を据え、設立からおよそ10年間を対象期間(2008-2017)として、当該地域社会を舞台に現出している多様な主体との接触と変容の記述・分析を行っている。
H28年度の主要な研究実績は以下に纏められる。第一に、対象地域にて調査を継続し、諸アクター間の社会関係の変化と背景要因について分析を進めた。また、昨年度の調査によりその重要性が明らかになった当該地域の教育ネットワーク組織についても調査を実施した。代表的な成果としては「『多文化共生』言説をめぐるポリティクス」(『日本都市社会学年報』第35号, 印刷中)、「学校教育をめぐる『境界』の再考」(異文化間教育学会発表/2016年度優秀発表賞受賞)、「『共』から立ち上がる『パブリックなもの』」(カルチュラル・スタディーズ学会発表)などが挙げられる。今年度をもって博士論文執筆に必要なデータの収集は完了しており、今後は執筆を進めていく予定である。
第二に、国外の事例との比較研究にも接続させていくために、次年度にカナダ・トロントで実施を予定している調査の準備を進めた。具体的には、当該地域における多文化主義の歴史的経緯や、現行の法制度、教育現場や地域の人々の社会関係などの実態について文献を渉猟した。また、滞在期間中に所属するトロント大学人類学研究室の受け入れ教員と、研究調査を進めていくにあたり事前の打ち合わせも行った。また3月には、神戸大学国際文化学研究科・国際文化学研究推進センター・JSPS 研究拠点形成事業が主催する、イギリスのケンブリッジ大学、エセックス大学で行われた移住と多文化主義に関する研究会での発表を通じて国内外の研究者と議論を行い、海外の事例との比較可能性についても示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、今年度の調査をもってデータ収集を完了した(関連場面での参与観察、また外国人学校教員・生徒、地域住民、近隣の公立学校教員を含む計51名のインタビューデータ)。最終年度は、これらのデータをもとに分析と博士論文の執筆を進めていく予定である。
また、これまでの研究成果についても投稿論文や学会発表にまとめ、国内外に積極的に発信することができた(H28年度:査読付論文2、国内学会発表3、国際学会発表2、受賞1)。これらの活動を通じて、関連テーマを扱う研究者とのネットワークの構築を学際的に進めるとともに、議論を多角的に発展させることができた。加えて、12月には、大阪大学大学院人間科学研究科にて博士論文の中間発表も行った。
そのほか、理論や手法の習得・発展、調査の実施を目的に、次年度5月~9月に予定しているトロント大学人類学研究室での研究留学の準備(文献渉猟、調査設計など)についても、先方との打ち合わせのもと順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、データの分析を進めるとともに、得られた知見を博士論文「多文化混交地域における 『共生』に関する社会学的考察―外国人学校をめぐる教育・社会的実践の変容を焦点に―(仮)」に集約していくことである。
また博士論文の執筆と並行して、トロント大学人類学研究室での研究留学(2017年5~9月)を通じて、理論や手法の習得・発展、国外事例との比較研究に向けた基礎的な調査も進めていく予定である。
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Research Products
(8 results)