2015 Fiscal Year Annual Research Report
学習者同士の繋がるeラーニングにおける学習回避要因を加味した継続支援の検討
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15J00506
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤山 郁夫 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | eラーニング / 学習量 / 自己効力感 / SNS / 学習意欲 / 動機づけ / 自己調整学習 / 教育工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
eラーニングは,我が国の生涯学習を支える媒体として注目を集めている反面,その単調性などから学習が長続きしにくいことが,古くからの課題とされてきた。このような学習の継続性の問題に対し,これまでの申請者らの研究では,一問一答式eラーニングにおいて,オンライン人数表示機能やツイート機能などから構成される「学習者同士の繋がる仕組み」を付与することで,学習量の減少を抑制できることが明らかとなっていた(Sawayama & Terasawa, 2015)。ところが,その効果には個人差が大きいことが課題の一つであった。そこで,本研究では,(1)「学習者同士の繋がる仕組み」の効果における個人差の規定因を検討し,(2)個人差に対応した学習の継続支援について検討することを目的とした。 初年度では,個人差の規定因に関する探索的な検討を行うとともに,結果の再現性を確かめるための追試を行った。結果,「学習者同士の繋がる仕組み」が学習量に与える効果は,学習者の「学習量に対する効力感」を調整変数とした交互作用効果を有していることが示された。具体的には,「学習者同士の繋がる仕組み」は,学習量に対する効力感が低い者の学習量を増加させる一方で,学習量に対する効力感が高い者の学習量を抑制していた。この結果は,学習量に対する効力感が十分に高い学習者に対しては,学習内容に直接関係のない他者情報の呈示は不要である可能性を示唆している。 ただし,これらの交互作用効果は,学習開始からの時間経過に伴って,次第に認められなくなる傾向を示していることから,継続性に対する影響については,今後慎重に検討を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の最たる目的は,「学習者同士の繋がる仕組み」がもつ学習量の減少抑制効果における個人差の規定因を明らかにすることであった。結果,個人差の規定因として,「学習量に対する効力感」が重要な指標となることが明らかになった。さらに,対象者の異なる追試結果からも,一定の再現性を得たことから,現象の頑健性がうかがわれた。これらの結果は,学習回避要因を加味した継続支援を検討するにあたって,重要な手がかりとなるものである。ゆえに,初年度の研究計画は,順調に進展したと判断しうる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の目的は,初年度で明らかとなった個人差の規定因を加味した学習継続支援を検討することである。具体的な支援策を決定するための研究を,現在進めている段階である。秋頃までに,支援システムを完成させ,評価実験を加えることを目指す。また,学習の継続性について検討するにあたっては,単純に前半から後半にかけての学習量の差分(減少量)を指標とした場合,0の学習量を維持した学習者と,100の学習量を維持した学習者が同等に評価されてしまうという問題がある。そこで,継続性の指標を複数設けることで,評価の妥当性を高めることも目指す。
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Research Products
(8 results)