2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J00509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山道 智博 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 光子光子散乱 / 量子電磁力学(QED) |
Outline of Annual Research Achievements |
以前2013年(平成25年)に理化学研究所SACLAで行った概念実証実験では, X線領域における初の光子光子散乱断面積制限を与えたが, 実験感度が低くルミノシティの向上が課題となっていた. 概念実証実験の知見を活かし, 最適化した実験セットアップでの測定を当該年度で実施した. 本研究の実験セットアップは, SACLAからのX線をSi完全結晶の刃からなるX線ビームスプリッターでのラウエ型X線回折により分割し, 交差するというものである.回折効率は薄い刃を使用すると高くなる. 前実験では加工の容易な厚さ0.6mmのものを使用していたが, 本測定では加工限界に近い厚さ0.2mmのものを設計して使用した. これにより回折効率が向上し感度が大幅に向上する. また, ラウエ型X線回折には刃の厚さに比例してビーム幅が広がるという性質があり, 薄い刃の使用はこの点でも感度の向上に寄与する. 迷光X線はバックグラウンドになりうるため, 実験に使用する真空チェンバー中にコリメータを配置してそのパスを制限する. 2013年の実験ではトレランスが低く, チェンバーの仰角調整に時間を要し測定時間を短くせざるを得なかった. 本測定ではビームスプリッターを大型化しチェンバー系のスケールを大きくすることによりトレランスを増やし, チェンバー仰角のアラインメントを自動ステージで行うことによって, 測定時間の長期化に成功した. また、SACLAの光源性能が大幅に向上しており, ビーム強度の増加/線幅の縮小/ビーム繰り返しの増加によりルミノシティがゲインしている. 以上のような要因から, 本測定では2013年の測定に比べ3桁もの感度向上を達成した. この結果は先行実験と全く異なるエネルギー領域での制限である点が重要である. 本結果は物理学会第71回年次大会で發表され, 現在この実験結果に関する論文執筆を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最適化した実験セットアップを用いた測定が成功裏に終わり, 大幅な感度向上を達成した. 現在大幅にセットアップを変更した, 二色発振を利用した実験の設計を行なっており, 光学系の最適化や測定方法の選定等を着実に進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の実験感度を更に向上し, 量子電磁力学の予言する光子光子散乱断面積に迫るためには現行のセットアップには限界があり, 全く新しい実験セットアップを使用することが必要である. そのセットアップとして, SACLAの新しい技術である二色発振を利用したものを使用し設計を進め, SACLAにて再度実験を行う. SACLAの二色発振とは, 時間的/空間的/エネルギーの異なるX線パルス二本を同時発振する新しい技術であり, ビームを分割する必要がなくなるため実験の自由度が増え, 光子光子散乱のルミノシティを大幅に改善できる. 先行/後進パルス同士を交差する為に, 先行パルスをSi完全結晶によるブラッグ型X線回折により反射させ, 反射ビームに後進パルスを衝突させる. このように衝突ビームの片方を回折させずに衝突させることでルミノシティが大幅に向上し, 先行実験に勝る相対感度で光子光子散乱の探索が可能になると考えられる.
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Research Products
(1 results)