2015 Fiscal Year Annual Research Report
外部刺激によりアンチセンス活性を制御可能な塩基部修飾人工核酸の開発
Project/Area Number |
15J00555
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 翔平 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アンチセンス核酸 / フォトクロミック分子 / ケージド化合物 / 人工核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンチセンス医薬品は有効な治療法の無い疾病の効果的な医薬品になり得る。しかし、投与されたアンチセンス医薬品が特定の組織や病変部位のみで薬効を示す事は未だ困難であり、対象疾病の制限や副作用の発現といった問題を抱えている。このような現状を打破するために、外部刺激に応答し自身の構造及び性質を変化させる人工核酸の開発に着手した。 光応答性核酸: これまでにフォトクロミック分子であるアゾベンゼンを塩基部5位に導入した2’-デオキシウリジン誘導体 (dUAz) を開発し、dUAzが相補鎖RNAとの二重鎖安定化能を光制御可能であることを見出している。1)光刺激に伴うdUAzの二重鎖安定化能の差異の増大、2)アゾベンゼン部位のシス型からトランス型への熱異性化の抑制 の両方を満たす為にdUAzに対し化学修飾を加えたアナログを種々合成し、オリゴヌクレオチド鎖中へと導入し、光異性化能や熱安定性、二重鎖安定化能の評価を行った。その結果、元々のdUAzよりも高い熱安定性を持つもの、光異性化能を持つものをそれぞれ見出した。 過酸化水素応答性核酸: がん細胞においては代謝の増大やミトコンドリアの変異、酸化ストレスの増大等の要因により正常細胞と比べ、過酸化水素の産生量が増大することが知られる。がん細胞特異的に活性を発現するアンチセンス核酸の開発を目指し、過酸化水素特異的に反応して水素結合能を回復するケージド核酸類を開発した。更に、その他の活性酸素種とはほぼ反応せず、優れた過酸化水素特異的な応答性を示したチミジンアナログを用いてアンチセンス核酸を合成し、過酸化水素産生量の異なる二種類の培養細胞に対し投与した。その結果、過酸化水素産生量の多い細胞において特異的に高いアンチセンス活性を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光応答性核酸: 電子的、立体的に異なる様々な置換基をアゾベンゼン骨格p位に導入し、オリゴヌクレオチド上で光異性化能および熱安定性の評価を行った。優れた光異性化能を持つアナログについては相補鎖RNAとの二重鎖形成における熱力学的パラメーターの解析を行い、紫外線照射によりシス型へと異性化させた条件下においてより安定な二重鎖形成が可能であることを明らかにした。また、得られた結果の一部を国外の学会で発表した。 過酸化水素応答性核酸: 過酸化水素に応答し、天然の核酸へと変換される4種のヌクレオシドアナログについて合成を達成し、過酸化水素に対し優れた応答性を有することを試験管内において確認した。特に、チミジンアナログについてはその他の活性酸素種に対する応答性も併せて確認することで過酸化水素に対する特異性を確認した。チミジンアナログを導入したアンチセンス核酸を用いて過酸化水素を多く産生する培養細胞において特異的に高いアンチセンス活性を示すことを確認した。以上の得られた結果の一部を国内の学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
光応答性核酸: 引き続き、dUAzの類縁体の合成および評価を行う。また、今年度のスクリーニングにおいてアゾ骨格を持つにも関わらず水中で全く光異性化能を持たないアナログも見つかっている。こちらについては光刺激以外の外部刺激に応答する人工核酸としての展開を検討している。 過酸化水素応答性核酸: ケージド核酸の導入とアンチセンス活性との相関をより詳細に検討するために同一配列を標的とした、ケージド核酸導入数の異なるアンチセンス核酸を種々合成し、アンチセンス活性を精査する。
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Research Products
(3 results)