2015 Fiscal Year Annual Research Report
高精度・高能率な大面積NC加工のための多電極型大気圧プラズマ発生装置の開発
Project/Area Number |
15J00581
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武居 弘泰 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 数値制御加工 / 大気圧プラズマ / Silicon on Insurator / 膜厚均一化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日では我々の生活に不可欠となっている半導体デバイスであるが、現在、その性能向上をデバイスの微細化によって実現する事は困難となりつつある。これを解決する為に考案されたSOIウエハは、優れた特性を持つ反面、デバイスを作製するSOI層に高い膜厚均一性が要求される。本研究では、これを高能率に解決する手法として犠牲酸化法を採用し、多電極型大気圧プラズマ発生装置を考案し開発を行った。今年度行ったこととしては、プロセスガスを適当に選択する事で他の手法への応用の検討、多電極型大気圧プラズマ発生装置の開発に先立ち、対辺間14 [mm]の六角形の電極面を持つ7つのアルミ製電極を用いて装置を試作と実験である。今後、SOIウエハに限らずどのような半導体材料においても今後はウエハの大口径化が進むと思われる。したがって、大口径化する試料に対して一括加工を行うためには更に多数の電極を敷き詰める事が要求され、同時に加工分解能向上のためには電極サイズを小さくすることも要求される。そこで、このような「大面積化・加工分解能向上」を目指し、新たに考案しためっき膜型電極とそれを用いて行った数値制御実験も行った。自ら考案しためっき型電極を採用することで従来の技術より簡便、安価、かつ操作性の優れた、非常に加工安定性の高い手法となった。これにより、将来的にさらに高い加工分解能が要求されても十分に対応可能であると考える。メッキの必要な厚みや形状は電磁気学的に計算することで最適化した。この装置を用いて数値制御加工を行ったところ、Si薄膜層の膜厚のばらつきがP-V値:2.84nmだったものが、0.86nmまで改善することに成功した。この結果が示す通り、本研究で提案する手法は1nm以下の非常に高い加工精度を実現する手法であることを証明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は予定に比べて概ね順調に進展していると思われる。まず、加工の高空間分解能かを達成した。大気圧プラズマの局在性を保つ最小の電極の大きさを検証し、後に試作する加工装置の電極の形状を決定することができた。検証にあたり、電場解析と熱流体シミュレーションを通してプラズマ発生領域の検討は非常に困難であったが、微小単電極装置を試作し、プラズマを発生させSi表面を酸化し、形成した酸化膜の膜厚を測定することで単位酸化痕を明らかにし、電極底面の形状と比較することで課題を解決することができた。最終的に、確実に電極直下のみでプラズマを発生させ制御できる大きさを決定し、それに基いて装置の試作を行った。また、加工の高スループット化においても大きな進展があった。従来は電極と試料の間に誘電体板を挟む構造を採用していたが、それもやめることで電極と試料の間のギャップをかなり近づけ装置レイアウトの自由度が増したため、大きく酸化速度を向上させることができた。また、プラズマ診断の手法を取り入れることで添加ガスの組成とラジカル密度、電子密度、試料温度などのパラメータの関係を明らかにしたいと考えていたが、この点は今後取り組むべき点として残っている。また、加工試料は半導体材料を想定していることから、種々の酸化条件での酸化膜の表界面をAFMやTEMなどで観察し表界面に与えるダメージを考察したところ、原因の分からない自己組織化によると考えられる模様の発現を確認し、今後の新たな研究課題として期待できるものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は大気圧プラズマによって形成される酸化膜の形状分布という観点から電極間隔の検討を行う。これによって、多電極型装置を開発する際の一般的な設計指針を得ることができると期待される。さらに、高周波を制御するためのより簡便なスイッチング機構を考案していく。これによって、本技術は実用化に向けて大きく前進することになる。将来的な高加工分解能化にも耐えることができる。さらに、大面積用の誘電体バリア放電によるプラズマ発生装置の設計・試作を行う。酸化した試料は反射分光法によりウエハ全面の酸化膜分布を観察し、電力や電源周波数依存を調べる。これにより、大面積で安定して均一に大気圧プラズマを発生させることが可能な条件を決定する。ラジカル密度や発光スペクトルを観察することでプラズマの状態を明らかにし、安定した大面積大気圧プラズマを実現する。同装置を用いて、ウエハ自身の厚み調整加工を試みる。また、本加工装置のプラズマエッチングへの適用可能性を検証する。他材料に関しては、難加工機能材料であるSiCやGaNをターゲットとして考えており、これらに対してもウエハの厚み調整加工が適用可能かどうか検証する。難加工材料に対する超精密なウエハ厚み調整加工法につながることが期待される。医療系の高分子材料の固着や表面修飾などにもプラズマは広く用いられており、安価で高スループットな加工が登場することが期待されているため、本技術が医療分野へ応用可能であることも検討している。
|
Research Products
(3 results)