2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J00598
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 雄大 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | DNA・タンパク質分離 / 熱応答性ゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
熱に応答してポアサイズが変化するゲルを創成し,タンパク質の電気泳動速度制御を試みる。創成したゲルを数センチメートル角の基板上の微小流路内に調製し,生体試料中のタンパク質の分離濃縮システムの開発を目指す。当該年度では,(1)作製した分離媒体のゲル孔径の推算,(2)タンパク質分離挙動の温度制御について検討した。 (1)作製した分離媒体のゲル孔径の推算 調製したポリマーは室温付近で温度上昇によってポリマー鎖が伸長することを確認した。熱応答性ポリマーをポリアクリルアミド骨格へと修飾した分離媒体を作製し,DNAの分離を試みた。結果,DNA間の分離度に温度依存性があることが確認され,この時,熱応答性ポリマーの伸長によって孔径が縮小しDNAの泳動モデルがogstonからreptationに変化していると考察した。熱応答性ポリマー濃度やポリアクリルアミドゲル濃度を変え様々な条件で調製し,温度上昇にともなうDNAの移動度変化から分離媒体のゲル孔径を算出した。一例として,1% 熱応答性ポリマーを修飾した5%T/5%C ポリアクリルアミドゲルにおいては温度上昇によって44 nmから28 nmに減少した。種々のゲル濃度において推算した結果,温度上昇時のゲル孔径変化量は約15 nmであった。 (2)タンパク質分離挙動の温度制御 作製した分離媒体の応用の一つとして,タンパク質の分離挙動の温度制御を試みた。3種のタンパク質の分離結果から,分子量の対数と移動度のプロットとの関係に直線性があることが確認された。また,その直線の傾きは温度によって変化し,温度上昇によって分離性能が向上することが確認された。 当初の予定通り,熱に応答して孔径が変化する分離媒体を創成し,タンパク質分離への適用が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的であるタンパク質濃縮システム構築に向けて,初年度には分離媒体の創成と温度変化によるタンパク質の電気泳動速度制御の検討,次年度には微小流路内に調製したゲルへのタンパク質の導入と濃縮の検討を進める計画を立てた。本年度では当初の計画通り研究を進めた。 まず,タンパク質分離の分離媒体創成において,従来用いられてきた疎水性の熱応答性ポリマーはタンパク質吸着の恐れがあり,代用としてpoly(N-acryloylglycinamide)を用いた。調製したポリマーは室温付近で温度上昇によってポリマー鎖が伸長することが確認され,ポリアクリルアミドゲル骨格に修飾し分離媒体として用いた結果,DNAやタンパク質の分離挙動の温度依存性が確認された。調製した分離媒体のゲル孔径を推算した結果,温度上昇によって孔径が約15 nm変化しており,ポリマーの鎖長がゲル孔径変化に影響を与えることが示唆された。 本研究で調製した分離媒体にタンパク質を濃縮するためには,温度上昇によるタンパク質の電気泳動速度変化をより顕著にする必要があると考えられる。そこで,精密重合によって分子量分布の狭いポリマーを調製し,ポリマー鎖長がゲル孔径変化に与える影響を考察する必要がある。次年度の研究を進めるにあたり,当初の予定に加えて検討すべき課題が見つかったが,おおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画である微小流路内へのゲル調製とタンパク質濃縮の検討に加えて,ポリマーの分子量の違いがゲル孔径に与える影響について検討を進める。 まず,精密重合によって分子量分布の狭いポリマーを調製する。調製には可逆的付加開裂連鎖移動重合を用い,分子量測定にはサイズ排除クロマトグラフィーを用いる。調製したポリマーの分子量の違いが,温度応答性や分離媒体のゲル孔径に与える影響について考察する。ゲル孔径変化が大きくなる条件を模索し,タンパク質濃縮に適したゲルの調製を行う。 次に,マイクロ流体デバイス流路内へゲルを調製し,タンパク質の濃縮挙動を観察する。低温においてゲルの孔径を拡大することで,ゲルからのタンパク質の回収を試みる。分子量の異なるタンパク質の回収条件を検討した上で,回収されたタンパク質を定量し,濃縮効率や回収率を評価する。研究の遂行にあたって,微小流路内の温度調節が可能なデバイスを設計する必要があり,その情報源としてマイクロ流体デバイスに関する学会に参加する。また,マイクロ流体デバイスの製造は外部機関に依頼する。
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