2015 Fiscal Year Annual Research Report
平安中後期和歌における源氏物語摂取の実相と展開に関する新研究
Project/Area Number |
15J00615
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瓦井 裕子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 源氏物語 / 享受史 / 歌合 / 和歌 / 源氏取り / 物語享受 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、平安中後期、特に『源氏物語』成立から後冷泉朝(1045-1068)までの歌合における『源氏物語』摂取の展開について研究を行った。『源氏物語』作中歌が公的和歌にどのように取り入れられていったのかという問題を通し、最初期の『源氏物語』摂取の実相を明らかにした。具体的には次の三点である。 ①長暦二年九月十三日権大納言師房歌合において、最初期の事例と思われる『源氏物語』摂取が源頼実によって行われ、師房がそれに関心を示したことによって師房主催の歌合を舞台に『源氏物語』摂取が行われていくことを指摘した。成果については、論文「歌合における『源氏物語』摂取歌――源頼実と師房歌合をめぐって――」としてまとめ、『中古文学』第96号に発表した。 ②後冷泉朝の歌合における『源氏物語』摂取が、六条斎院〓(女+某)子内親王歌合においてのみ継続的に行われ、さらにそれが源師房の影響によるものであったことを指摘した。成果については、日本文学協会第35回研究発表大会にて口頭発表し、論文「〓(女+某)子内親王家歌合と『源氏物語』摂取――源師房の関与をめぐって――」としてまとめて、『日本文学』(採録決定・掲載号未定)に報告予定である。 ③後朱雀・後冷泉朝より名月の夜とされるようなった九月十三夜が『源氏物語』に由来することを明らかにした。長暦二年九月十三日権大納言師房歌合において、夕霧巻の九月十三日の描写を意識して歌が詠まれたことによって九月十三日の月が意識されはじめ、それが後冷泉帝国母の忌月の問題と絡み、行事化していったことを指摘した。成果については、中古文学会関西部会第40回例会において口頭発表し、論文「九月十三夜詠の誕生――端緒としての源氏物語摂取――」(『国語国文』 2016.7)に報告予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公的和歌における『源氏物語』摂取が、源師房や和歌六人党などによって行われるようになったことを指摘し、それを通して最初期の『源氏物語』享受の一端を明らかにすることができた。成果は学会誌に発表しており、また、その後『源氏物語』摂取がどのように展開していったのかについても次年度に論文としてまとめられる予定である。後の時代における『源氏物語』摂取についても新たな知見を得ており、成果の公表を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平安中後期和歌における『源氏物語』摂取の実相を明らかにするため、後冷泉朝と堀河朝を特に重要な時代と位置付け、研究を行う。次年度は特に堀河朝の『源氏物語』摂取についてその展開を分析し、院政期和歌における『源氏物語』摂取との連続性を重視して研究を行う。成果は順次、論文および口頭発表して報告していく予定である。
|
Research Products
(10 results)