2015 Fiscal Year Annual Research Report
鉄筋コンクリート建築物の機能維持限界の定量化を目的とする次世代の構造設計法の提案
Project/Area Number |
15J00625
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尹 ロク現 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 構造解析 / マルチスプリング(MS)モデル / ファイバーモデル / 有限要素モデル / 部材の終局安全性評価 / 主筋の座屈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,二次壁(非構造壁)を有する柱梁架構の高精度な性能評価モデルを構築することである。さらに,高精度な性能評価モデルに基づいて,二次壁やスリットの存在が建物の機能性を含む耐震性能に与える影響を考慮し得る,新しい構造設計の枠組を構築することである。 上記の目的を達成するため、平成27年度は平成25年に実施した構造実験を対象にして架構実験のシミュレーション解析を行った。既往の架構実験では二次壁が構造性能に影響を与えることが確認された。また、構造スリットに配筋されている振れ止め筋が架構の初期剛性および耐力上昇に影響を与えた。これらの影響を考慮して構造解析するためのモデル化方法として,マルチスプリング(MS)モデル,ファイバーモデル,有限要素モデルに着目し、実験と解析の比較を通してその妥当性について検証した。その結果、二次壁および振れ止め筋が構造性能に与える影響をこれらのモデル化方法により精度よく評価できた。 また、既往の実験により,曲げ降伏が先行するRC梁部材では大変形角において主筋の座屈が生じる可能性が示された。そして、部材の終局安全性評価という観点では,主筋の座屈はRC梁部材の安全限界点に相当すると判断される。そこで、平成27年度はRC梁部材の主筋座屈のメカニズムを解明し,座屈発生点の推定方法を提案した。具体的には、修正Menegotto-Pintoモデルを用いた主筋の応力-ひずみ関係において、主筋の座屈耐力を除荷曲線上の等価剛性より評価する座屈発生点の評価手法を提案した。まこれらの成果に基づいて、骨組解析より得られた主筋の応力-ひずみ関係上で、提案する評価手法により主筋の座屈発生点を推定することで建物の安全限界点を評価し、梁主筋の座屈発生点に基づく、梁降伏型建物の安全限界性能の定量的な評価方法に道筋をつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二次壁の影響を考慮する梁降伏型鉄筋コンクリート建物の次世代の性能評価設計の実現を目的に,とくに構造設計体系の枠組みの構築,構造解析モデルの構築,安全限界性能の評価方法の提案を行った。 構造解析モデルの構築では,(二次壁を有する)梁の構造解析モデルとして,曲げと軸力の相互作用を考慮できるモデルの利用を前提に,マルチスプリング(MS)モデル,ファイバーモデル,有限要素モデルの3通りのモデルを用いて,過去に実施した実験結果を精度よく評価できることを検証し,建物の性能評価に用いる構造解析モデルの完成を果たした。 また,建物の安全限界性能の評価方法として,梁主筋の座屈発生点の評価方法を提案し,実験結果との整合を検証し,建物の安全限界性能の定量的な評価に現実的な道筋をつけた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に構築する解析モデルを用いてE-Defenseにおける大型架構実験に対するシミュレーション解析を行い,実験結果と解析結果の適合性を検証する。この検討により,二次壁を有する柱梁架構の高精度な性能評価モデルを構築する予定である。 また,1年目に構築する力学的な損傷評価モデルについて,居住者の感覚との相関を分析する予定であり,人間科学に基づくアプローチをして,とくに人間心理(不安感,危機感など)を定量化し得る指標と建物の住機能維持限界の相関を検出することを試みる予定であった。しかし,人間心理を工学的な定量化するのは大変困難である。それで,居住者の感覚と密接に関係がある断熱と遮音について建物の損傷との相関を分析する。このため,実験を計画しており,部材の損傷による断熱と遮音の性能を定量化し得る指標と建物の住機能維持限界の相関を検出することを試みる見込みである。
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Research Products
(8 results)