2016 Fiscal Year Annual Research Report
フラビウイルスのゲノム輸送機構の解明と神経病態への影響の探索
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15J00686
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平野 港 北海道大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 人獣共通感染症 / フラビウイルス / ダニ媒介性脳炎 / 神経細胞 / RNA輸送 / 神経機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
先年度の研究により、TBEVの神経細胞内ウイルスゲノム輸送には、ゲノムRNA中の非翻訳領域(UTR)の関与が示唆されていた為、より詳細な輸送領域の同定を行った。ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)もしくはウエストナイルウイルス(WNV)の非翻訳領域を持つRNAの発現系を構築し、解析を行ったところ、TBEVの5’UTRは特異的にRNAを神経突起へと輸送する機能を持つことが示された。TBEVのUTR中にはRNA二次構造として2つのステムループ構造(SL-1およびSL-2)を持つことが知られている。これらの構造に欠損および変異を導入した発現系を多数構築し、解析を行ったところ、SL-2のループ部分に変異を導入した場合、輸送が極端に阻害されることが示された。ウイルス由来の新規のRNA輸送モチーフとして、SL-2領域が同定された。 TBEVのリバースジェネティクス系を用いて、輸送モチーフに変異を導入したウイルスを作出した。野生型および変異ウイルス初代培養神経細胞に接種しウイルス複製の観察を行った。結果、樹状突起上ウイルスゲノム分布、及び局所複製の結果生じるウイルス抗原集積の顕著な減少が認められ、ゲノム輸送能が欠損した変異ウイルスの作出に成功した。 ゲノム輸送能欠損ウイルスの神経症状への影響を評価するため、マウスモデルにおける解析を行った。末梢組織での増殖の影響を避けるため、野生型および変異ウイルスをマウスへと脳内接種し、神経症状スコアリングを行った。結果、致死率については両株間に差は認められず、全個体が死んだものの発症期間中において有意な神経症状スコアの低下が認められた。ゲノム輸送能の欠損が、ウイルスによって引き起こされる神経症状へと影響することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度ではウイルスゲノム輸送の為のシグナル配列の同定を行った。結果、ウイルスゲノムの5’非翻訳領域が輸送のための責任因子として同定された。また、輸送能を欠損した変異ウイルスの作出に成功し、変異ウイルスは野生型と比較して、マウスへの脳内接種時に神経症状スコアの低下が認められ、ウイルスゲノム輸送が神経症状へと関与することが示された。現在輸送の為の宿主因子について解析中であり、これらの結果は査読付き雑誌へと投稿準備中である。概ねこれらの成果は当初の計画どおりであり、順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、神経細胞は樹状突起へのmRNAの輸送、及び樹状突起上での翻訳制御を行うRNA Granuleと呼ばれる機能的複合体を持つことが明らかになってきており、このRNA Granule は神経細胞中での効率的なタンパク質供給や複雑な神経活動の即時的な制御のために、樹状突起上でのタンパク質の現地生産を可能としている。TBEVの樹状突起でのゲノム輸送/複製とRNA Granuleによるタンパク質の現地生産には共通点があり、TBEVはこの種の細胞内機構を利用している可能性がある。 現在、ウイルスゲノム輸送のための宿主因子の同定を行っている。具体的には、初代培養神経細胞において、ウイルスゲノムとRNA Granuleの構成タンパク質との共局在解析を行い、宿主因子の絞込を行う。また、関与が疑われるタンパク質が同定された場合には、免疫沈降法によるウイルスゲノムRNAとの相互作用の確認およびDominant Negative法による機能阻害を試み、ウイルスゲノム輸送への関わりを実験的に証明する。また、ウイルス感染が宿主の生理的なmRNA輸送へと影響を与えているのか、mRNA分布の変化を通して解析を行う。
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Research Products
(5 results)