2016 Fiscal Year Annual Research Report
好白蟻性ハネカクシの多様性と寄主シロアリ社会利用の実態解明
Project/Area Number |
15J00725
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金尾 太輔 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ケニア / マレーシア / Termitopaediini / Feldini / Termitohospitini / Trichopsenius |
Outline of Annual Research Achievements |
マレーシア・サラワク州(Lambir Hills国立公園、Kubah国立公園、Gunung Gading国立公園)、ケニア(KakamegaとMarigat)、およびニュージーランド(オークランド周辺の保護公園)において合計86日の野外調査を実施した。初めてのアフリカ調査となったケニアでは、好白蟻性Termitopaediini族の貴重な標本を得たほか、マレーシアサラワク州では、好白蟻性Feldini族に属する明らかな2未記載種を得た。分類学的研究として、屋久島、台湾、ラオスより得られたオオシロアリを寄主とする好白蟻性ハネカクシについて、新属Hodotermopsiphilaを創設し、屋久島よりH. maruyamaiとH. nitens、台湾よりH. longisetosa、台湾およびラオスよりH. sugayaiの4種を記載した(現在投稿中)。系統学的研究として、野外調査で得た12族21属33種について、COI・COII・16SrRNA・18SrRNA・28SrRNAを対象にしたDNA実験を行った。これらの標本には、これまでにDNA情報が得られていなかった好白蟻性分類群が含まれており、来年度に実施する系統解析に向けて充実したデータを得ることができた。現在はDNA情報のアライメント作業を行っている。 生態学的研究では、昨年度に引き続き、Lambir Hills国立公園において、GC/MS分析と安定同位体分析に用いる標本を収集した。また、日本のヤマトシロアリとこれを寄主とするハネカクシTrichopsenius japonicusについてもGC/MS分析を行った。Trichopsenius japonicusとヤマトシロアリの飼育では、T. japonicusの交尾行動と採餌行動の観察に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分類学的研究では、新属新種の記載に加えて、野外調査によって更なる未記載種を得ることができ、好白蟻性ハネカクシの種多様性解明に貢献した。また、自由生活性Myllaenini族の下位同物異名であると考えられているTermitohospitini族の模式標本を米国シカゴのフィールド自然史博物館より借用し、族の再検討に着手した。系統学的研究では、アフリカ(ケニア)から貴重なサンプルを入手できたことに加え、マレーシアよりこれまで得られていなかった好白蟻性分類群のサンプルを得たことより、系統解析に含める分類群が非常に充実した。これにより、ヒゲブトハネカクシ亜科において好白蟻性種で構成される分類群のほとんどを網羅した系統解析の実施が可能になった。対象となるハネカクシのDNA実験は、平成28年度中に終わらせることができた。生態学的研究として、当初よりGC/MS分析を行う予定だった、東南アジアに分布しアシナガシロアリを寄主とする好白蟻性ハネカクシに加えて、日本に分布しヤマトシロアリを寄主とするハネカクシについても分析を実施することができた。安定同位体分析に使用するサンプルも、順調に集まっている。さらに、 T. japonicusとヤマトシロアリの飼育では、T. japonicusの交尾行動と採餌行動を世界で初めて観察した。T. japonicusの交尾は、寄主シロアリが密集した場所で行われ、交尾時間は1時間以上に及ぶこともあった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も、野外調査を継続して好白蟻性ハネカクシの種多様性解明を目指す。1属で1族を構成する好白蟻性分類群や再検討に着手しているTermitohospitini族に属する種が多く分布するオーストラリアの調査を計画中である。また、再検討の必要がある日本産Trichopsenius属ハネカクシについて、研究に用いるサンプルを得るための野外調査をトカラ列島・奄美群島で実施する。分類学的研究では、これまでに得られている未記載種の記載を進めるとともに、引き続きTermitohospitini属の再検討を遂行する。また、ハネカクシ以外にも、マグソコガネやクロバネキノコバエの好白蟻性種について、これまでに得られている生態的ば知見や未記載種を発表する。系統学的研究では、解析に用いるDNA情報のアライメント作業を行い、できるだけ早い時期に系統解析を実施する。成果は年度内に論文にまとめ投稿する予定である。生態学的研究では、これまでにGC/MS分析が完了している、アシナガシロアリおよびヤマトシロアリを寄主とする好白蟻性ハネカクシについてデータを解析し、成果を論文にまとめて投稿する。また、安定同位体分析については、5月にこれまでに得られたサンプルの分析を実施する。得られた成果は、年度内に論文にまとめて投稿する。T. japonicusとヤマトシロアリの飼育も継続し、生活史やさらなる生態的知見の蓄積を目指す。
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Research Products
(2 results)