2015 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の高齢者における活動制限のリスク要因の検討―健康寿命の格差縮小に向けて
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15J00732
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
門間 貴史 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 健康格差 / 健康寿命 / 活動制限 / 高齢者 / 社会経済状況 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、我が国の高齢者の活動制限・心身健康・健康行動・社会経済状況について、健康寿命の上位の地域と下位の地域との相違を検討した。平成22年国民生活基礎調査個票データから、分析に使用する世帯票、健康票、所得票の回答データを連結したのち、橋本ら(2012)がすでに算出している都道府県別の健康寿命に基づいて、男女別の健康寿命上位10都道府県と下位10都道府県に在住する65歳以上の高齢者8240名(男性:3528名、女性:4712名)を抽出した。分析項目は、①活動制限の有無、②年齢、③疾患の有無(男女各上位10項目)、④精神健康、⑤社会経済状況(世帯構成、就業状況、世帯単位の等価可処分所得)を用いた。分析は上位と下位各10都道府県の各変数の比較を男女別に行った。 分析の結果、男性では、就業状況や世帯単位の等価可処分所得および循環器系の疾患で有意な差が認められ、健康寿命の短い都道府県の方が長い都道府県よりも仕事のない者、等価可処分所得が相対貧困線未満や中央値未満の者、循環器系の疾患を持っている者の割合が高かった。一方、女性については、等価可処分所得だけでなく、目の病気、腰痛症、歯の病気、肩こり症、骨粗しょう症といった多岐にわたる疾患にも有意な差が認められ、健康寿命の短い都道府県の方が長い都道府県よりも等価可処分所得が中央値未満の者や上記の疾患を持っている者の割合が高かった。また、差の大きさを表す効果量をみると、男性では等価可処分所得で最も大きい値を示した一方で、女性では等価可処分所得の効果量は他の疾患との差はみられなかった。 したがって、健康寿命の長い地域と短い地域の高齢者には社会経済的格差があり、その差は特に男性で顕著であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画である研究1「高齢者の活動制限・心身健康・健康行動・社会経済状況―健康寿命の長い地域と短い地域の比較検討」をすべて予定通り遂行し、研究目的達成に向けた第一段階としての研究成果をあげることができた。 また、計画の当初段階で投稿していた英語論文も、国際誌Geriatrics & Gerontology International に受理・掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、研究2「高齢者の活動制限に関わるリスク要因―健康寿命の長い地域と短い地域の比較検討」および研究3「高齢者の活動制限に関わるリスク要因と社会経済状況との関連―健康寿命の長い地域と短い地域の比較検討」を実施する。また、研究成果は未公表部分を含めすべて28年度内に公表する。
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Research Products
(6 results)