2015 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノレス二重ベータ崩壊観測のための熱量蛍光検出器の開発
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15J00768
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鉄野 高之介 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 二重ベータ崩壊 / ニュートリノ / 熱量蛍光検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊(0νββ崩壊)の発見を目指すCANDLES実験では48Caを含むCaF2結晶と光電子増倍管を用い、蛍光信号を観測することで48Caの0νββ崩壊探索を行っている。検出器のさらなる高感度化には高いエネルギー分解能とバックグラウンド除去能をもった検出器が必要であり、そのためにCANDLES実験では48Caを用いた熱量蛍光検出器を導入する計画である。私は将来の大型熱量蛍光検出器の実現のために、数10~数100グラムのCaF2結晶を4~8個用い、熱量蛍光検出器の原理検証を行う。 48Caの熱量蛍光検出器の原理検証を行うためには、CaF2結晶とその熱量信号を検出するためのサーミスター、蛍光信号を検出するための光検出器、結晶を極低温に冷却するための希釈冷凍機、さらに信号を読み出すためのエレクトロニクスの準備が必要である。平成27年度は熱信号を検出することを目標に、光検出器以外の準備を進めてきた。 CaF2結晶については、1辺が2cmの立方体4個の製作を業者に依頼し、既に準備は完了している。サーミスターについては、既に性能が実証されているNTDGeサーミスターを平成27年度に東京大学蓑輪研究室から譲り受けた。希釈冷凍機は過去に東京大学の蓑輪研究室で使用していた物を平成27年度に譲り受けたが、配管部に多くの真空漏れの箇所があることが分かったので、現在補修を行っている。信号を読み出すエレクトロニクスについては、信号を増幅するためのアンプ、熱信号を記録保存するための波形記録装置があるが、アンプについては業者と相談し、低ノイズのアンプを作成した。波形記録装置については必要十分なサンプリング周波数を持ったものを購入した。 熱量信号を検出するための装置の準備は既に完了しており、新年度早々希釈冷凍機の運転を開始できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱量蛍光検出器において、微小な熱信号を検出するためには、結晶の熱容量を小さくすることが重要であり、そのために結晶を安定的に10mK程度の極低温に冷却できる希釈冷凍機を用いる必要がある。希釈冷凍機は当初新潟大学のものを借用する計画であったが、使用実績があり、熱量検出に適した希釈冷凍機を平成27年度に東京大学蓑輪研究室から譲り受けることができた。しかし老朽化のため、希釈冷凍機を運転するための装置の配管に多くの真空漏れの箇所があることが、リークディテクターを用いたリークチェックを行うことにより分かった。真空漏れの原因は配管とバルブの継ぎ目や配管どうしの継ぎ目に使用しているナットの内側のシール部分の劣化であることが分かったので、現在全ナットを交換中である。またナットを交換するためには構造的な面から配管も交換する必要があるので全配管も交換中である。現在までにほぼ全てのナットと配管の交換が終了し、補修箇所は真空漏れが無くなっていることを確認できている。残りのナットと配管を交換することにより、真空漏れの箇所は無くなる見込みである。 熱量検出のためのその他の準備として、CaF2結晶とその熱量信号を検出するためのサーミスター、信号を読み出すためのエレクトロニクスの準備が必要であるが、これらの準備は既に完了している。そのため新年度早々希釈冷凍機の運転を開始できる見込みであり、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
48Caを用いた熱量蛍光検出器の開発において、新年度早々希釈冷凍機の運転を開始し、CaF2結晶4個を10mK程度の極低温まで冷却する。 その後それぞれの結晶にサーミスターを接着し、それを希釈冷凍機に組み込み、熱量信号を検出する。 48Caを用いた熱量検出器ではCaF2結晶内部の238Uのα崩壊がバックグラウンドになるため、熱量検出器の原理検証の後、蛍光検出器も導入し、熱量と蛍光量を同時に検出することでα線のクエンチング効果を利用したα/βの粒子弁別を行う。 蛍光検出器には光吸収体として、熱容量が微小な超薄膜Si半導体などを使用し、その温度上昇をNTDGeサーミスターで検出する。光吸収体をCaF2結晶に直接接着すると、CaF2結晶の温度上昇も観測されるため、正確な蛍光量を測定できない。そのため、光吸収体をCaF2結晶に直接接触させずに蛍光を効率的に検出できるデザインを考案する。また検出する光量を増加させるための反射フィルムの材料を選定する。これらにより、蛍光検出器を導入することで高いバックグラウンド除去能が得られることをを実証する。 さらに、0νββ崩壊探索には大量の崩壊核が必要であるので、結晶サイズを大型化し、熱量と蛍光量の同時検出を行う。結晶の大型化により熱容量が大きくなるので、波形記録装置を導入し、オフライン解析においてノイズ除去に取り組む。これにより結晶の大型化・複数化を行うことで、将来の48Caを用いた大型熱量蛍光検出器の実現が可能であることを立証する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Low background techniques in CANDLES2015
Author(s)
K. Nakajima, T. Iida, T.Kishimoto, K. Matsuoka, M. Nomachi, S. Umehara, W. M. Chan, H. Kakubata, X. Li, T. Maeda, T. Ohata, B. Temuge, K. Tetsuno, V.T.T. Trang, T. Uehara, S. Yoshida, K. Morishita, I. Ogawa, K. Sakamoto, Y. Tamagawa, M. Yoshizawa, K. Fushimi, R. Hazama, N. Nakatani, and K. Suzuki
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Journal Title
AIP Conf. Proc. 1672,110004 (2015)
Volume: 1672
Pages: 1~6
DOI
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[Journal Article] The CANDLES Trigger System for the Study of Double Beta Decay of 48Ca2015
Author(s)
T. Maeda, S. Ajimura, W. M. Chan, K. Fushimi, R. Hazama, K. Ichimura, T. Iida, Y. Inukai, T. Ishikawa, H. Kakubata, T. Kishimoto, K. Matsuoka, K. Nakajima, N. Nakatani, M. Nomachi, I. Ogawa, T. Ohata, H. Ohsumi, M. Saka, K. Sakamoto, K. Seki, Y. Sugaya, K. Suzuki, Y. Tamagawa, D. Tanaka, K. Tetsuno, et al.
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Journal Title
IEEE Transactions on Nuclear Science
Volume: 62
Pages: 1128~1134
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] New DAQ System for the CANDLES Experiment2015
Author(s)
K. Suzuki, S. Ajimura, W. M. Chan, K. Fushimi, R. Hazama, K. Ichimura, T. Iida, Y. Inukai, H. Kakubata, T. Kishimoto, S. Maeda, T. Maeda, K. Matsuoka, K. Nakajima, N. Nakatani, M. Nomachi, I. Ogawa, T. Ohata, H. Ohsumi, K. Sakamoto, Y. Tamagawa, D. Tanaka, K. Tetsuno, V. T. T. Trang, S. Umehara, W. Wang, et al.
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Journal Title
IEEE Transactions on Nuclear Science
Volume: 62
Pages: 1122~1127
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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