2015 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素環境下での過換気による認知疲労に血中酸素濃度が関わるか
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15J00782
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
越智 元太 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 実行機能 / 認知疲労 / 低酸素環境 / 中強度運動 / 過換気 / ストループ課題 / 近赤外線分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は低酸素環境下での運動による実行機能の低下(認知疲労)の脳内メカニズムを、最新の脳機能イメージング装置である近赤外線分光法装置(fNIRS)を用いて解明し、認知疲労の抑制、回復法を見出すことを目的としている。 これまでの研究で、低酸素環境下での中強度運動が、常酸素環境下での同強度の運動と比べ、実行機能低下を引き起こされることを明らかにし(日本体力医学会(2013)で口頭発表)、その背景に運動中の過換気が関与する可能性を見出した(ECSS: European College of Sport Science (2014) で口頭発表)。さらにfNIRSを用いて、この認知疲労の背景に実行機能を司る左半球の前頭前野背外側部(DLPFC)脳活動低下の関与を明らかにした。 しかし、局所的な酸素化ヘモグロビン濃度から神経活動を評価するfNIRSは、異なる酸素濃度環境下での比較が困難である。そこで本年度は、中強度運動群、安静群ともに低酸素環境(13%酸素濃度: 高度3,500m相当)への暴露を課し、運動による認知疲労の脳内メカニズムを検討した。健常成人16名を低酸素環境に暴露させ10分間の中強度運動(50%VO2peak)を課した。その前後にストループ課題を行い、課題中の前頭前野脳活動をfNIRSで測定した。その結果、低酸素環境下での運動後ストループ課題成績が低下し、その際、ストループ課題の遂行に必要な左DLPFCの神経活動低下が見られた(論文投稿中)。この結果から、低酸素環境下での運動による認知疲労の脳内メカニズムとして左DLPFCの活動低下が関与することが明らかになった。今後は実行機能に関わる前頭前野のその他の部位(腹外側部、前頭極)の解析を進めていく。現在は、脳組織酸素モニターを用い、低酸素環境下での運動中の脳内酸素動態と過換気、認知疲労の関係を検討している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低酸素環境下での中強度運動による実行機能低下(認知疲労)の脳内メカニズムを検証するにあたり、認知疲労の運動モデル作成に時間を要し、本実験への取りかかりが遅れてしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は平成27年度に作成した認知疲労の運動モデルを応用し、脳組織酸素モニターを用いて、低酸素環境下での運動中の脳内酸素動態が過換気、認知疲労と関係するか検討するとともに、低酸素運動中もしくは低酸素運動後の炭酸ガス吸入、高酸素ガス吸入が認知疲労を抑制、軽減するか検証する。そして、これらの研究成果をまとめ、最終年度の研究成果発表 (学会発表や論文化) につなげる。
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Research Products
(1 results)