2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J00811
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 稜介 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 戦国期幕府論 / 古文書学 / 寺社勢力 / 幕府奉行人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦国期における京都の政治権力と社会勢力との関係や、それらを包摂する秩序の変容を分析することで、戦国期社会像の再構築を行うことである。本年度は、昨年度までに収集した史料や本年度新たに収集した史料の分析・検討を進めるとともに、得られた知見の発表を行った。 戦国期の武家権力と顕密系寺院との関係を検討した昨年度に引き続き、本年度は、寺社に伝来した権利認定文書の発給過程と受益者による文書請求先の選択という行為について分析を進めた。織豊期を対象とした研究においては、武力を持たないような寺社であっても主体性を持って世俗権力との関わりを構築した点が明らかにされつつあるが、このような動向の淵源は戦国期における政治的混乱に求められ得ると考える。そこで、戦国期に特徴的な事例として、明応の政変によって京都を逐われた足利義材に属する奉行人が発給した文書や、大徳寺大工職相論における文書請求先の変遷などを検討し、戦国期における文書請求の移り変わりを描くことを試みた。以上の成果は史学会大会において発表を行い、事例の再検討を重ねつつ論文化の作業を進めている。 また、上述の検討を通して、幕府による権利認定文書発給作業を事実上差配する室町幕府奉行人に対する個別研究が必要であるとの認識に至ったため、関連史料の収集を進めた。これらのの成果と論点を整理し、来年度の論文化を目指す。 このほかに、全国学会への出席を継続して行い、とりわけ、同志社大学で開かれたAAS in ASIA, Kyoto 2016などの国際学会に参加し最新の東洋学の成果をひろく摂取し得たのは貴重な経験であった。日本史学の分野に関して言うと、国内においては重要な研究成果が蓄積される一方で、国際的に発信する試みは人文学系統の他分野と比較してもまだ十分とは言えない。自身の研究課題と並行してこれらの問題についても考えてゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、東京大学史料編纂所・国立公文書館などの研究機関への出張を行い、当初より予定していた史料の収集を進めることができた。 また、研究成果の一部を全国的な学会である史学会大会において発表することができ、報告内容の論文化も進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究期間中に収集した未翻刻文書の検討を行い、戦国期に特徴的な事例を集めるとともに、既刊史料の検討対象を広げる。 また、これまでの研究では、文書受給者に対する考察を進めて戦国期における性格変化を論じたが、今後は、文書を発給する組織の分析も行う。 本研究課題は来年度が最終年度であるので、博士論文の執筆に向けて先行研究の再検討を行い、研究史上における本研究の位置づけをより明確化すべく、問題点と論点の整理を進める。
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