2015 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランス舞踊論における独創性概念――舞踊言語と自然
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15J00831
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川野 惠子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ノヴェール / カユザック / メネストリエ / 独創性 / 模倣芸術 / 劇的舞踊 / 身体表現 / バレエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀フランス舞踊論における独創性概念の解明を課題とする。そのために今年度は18世紀フランス舞踊論について、1)模倣芸術論としての基本理念、2)模倣芸術論の限界と独創性概念の萌芽の解明を焦点に研究を進めた。 1)18世紀舞踊論において、模倣芸術理論という基本理念を越えて何が契機となり独創性概念が成立したのかを明らかにするために、先ず17-18世紀における模倣芸術論としての舞踊理論成立について通史的考察を行った。その結果、17世紀メネストリエによる舞踊論において、身体の外側における情念の視覚化として舞踊表現が論じられ始め、これを典拠として18世紀のカユザックやノヴェールが、登場人物の情念の視覚的模倣再現として舞踊言語を確立し、模倣芸術論として劇的舞踊理論が成立したことを明らかにした。以上の成果については「第66回美学会全国大会」、「西洋比較演劇研究会7月例会」において口頭発表の上、『西洋比較演劇研究』に投稿した。 2)以上の模倣芸術論としての舞踊理論から、いかに独創性概念が萌芽的に成立したのか考察した。その結果、身体における情念の視覚化という舞踊の再現模倣において、身体は再現表現であると同時に再現媒体である。この表現と媒体の重複という舞踊ジャンル固有の現象から、舞踊論における模倣芸術論の限界と独創性概念の萌芽的成立が認められることを明らかにした。以上の成果発表については、来年度初めの「第18回オックスフォード・ダンス・シンポジウム」での口頭発表が採択されている。さらに18世紀独創性概念の理論的背景を明らかにするために、当時の辞書の項目originalを網羅的に検討した。その結果『百科全書』のディドロ執筆ではないかとされる項目originalで認められる自然模倣概念の変容が独創性概念へと通じる契機であったことをディドロのサロン評との関係から論じ、『美学研究』に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
舞踊芸術ジャンル固有の再現媒体である身体の個別性が18世紀フランス舞踊論における独創性概念の契機となったことを明確に示すことができた。また独創性概念は模倣芸術理論の否定というよりは、自然模倣概念の変容にともない内在的に成立したことを、舞踊理論及び同時代の芸術理論からも明らかにした。よっておおむね順調に進展している。当初イギリスの独創性概念からの影響についての検討も計画していたが、これについては研究指導委託制度を利用しパリ第三大学にて指導を受けた結果、先ずはフランス芸術理論の内在的な検討から始めるようにという指導があったため、フランスの芸術理論に焦点を絞って研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は主に以下二点について研究を進める。1) 今年度の研究から、メネストリエは舞踊の模倣に理知的で精神的というよりは「快」や「気晴らし」といった感覚主義的な目的を定義していることがわかった。このメネストリエの舞踊思想を、18世紀舞踊論にみられる独創性概念の一つの重要な原点ととらえ、メネストリエの音楽論など舞踊論以外の著作を含めて検討し、18世紀舞踊論への影響を明らかにする。2)今年度の研究から、18世紀フランス舞踊論における独創性概念は視覚的像を契機として成立したことが分かった。これを踏まえて来年度は、当時の像理論を検討し、像と独創性概念の関係を明らかにする。
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Research Products
(5 results)