2015 Fiscal Year Annual Research Report
運動時の循環反応に関する研究―個人差に着眼した新たな研究法によるアプローチ―
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15J00841
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邊 和仁 筑波大学, 体育系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 血圧調節 / 動的運動 / 心拍出量 / 末梢血管抵抗 / 神経性循環調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
各個人に最適な運動トレーニングを考える上で、運動に対する生体反応の個人差を深く理解することが重要であると考えられるが、運動時の循環反応の個人差についてはほとんど研究されておらず、明らかではない。本年度においては、動的運動時における血圧上昇要因(心拍出量および末梢血管抵抗の反応)の個人差の程度や、その個人差に関連するメカニズムを検討することを目的として実験を行った。 これまでの研究において用いてきた静的運動から動的運動への発展を図るうえで、まずは運動様式の違いによる影響を明確にすることが重要な課題として挙げられたことから、同一筋群が動員されるが運動様式が異なるモデルである静的ハンドグリップ運動(HG)と動的HGを用いた実験を行った。健康な男女30名を被験者とし、最大発揮張力の50%での静的HGおよび動的HGをそれぞれ疲労困憊まで行うこととした。筋内代謝産物の蓄積を感知して交感神経活動亢進を引き起こす反射性循環調節(筋代謝受容器反射)の作用を調べるため、各HG後に前腕阻血を4分間行った。得られた主な結果は、1) 静的HG時に心拍出量および総末梢血管抵抗が大きく増加する者ほど、動的HG時にもそれらが大きく増加するという関係性がみられたこと、また、2) 筋代謝受容器反射に対して心拍出量および総末梢血管抵抗が大きく増加するものほど、静的HGおよび動的HGの疲労困憊付近においてそれらのパラメーターが大きく増加するという関係性がみられたことであった。これらの結果から、ハンドグリップ運動時における血圧上昇要因(心拍出量および末梢血管応答)は、その運動様式が異なる場合でも(静的 vs. 動的)同一個人内では同様となること、また、それらの運動の疲労困憊付近での血圧上昇要因の個人差には筋代謝受容器反射に対する反応の違いが関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動様式の違い(静的運動と動的運動)による影響を明確にすることの必要性から、これまで用いてきた実験モデル(静的ハンドグリップ運動)と活動部位が同一である動的ハンドグリップ運動を用いた実験となったが、同一個人内では運動中の血圧上昇要因が運動様式間で同様となることや、その個人差は筋代謝受容器反射に対する反応の違いと関連することを明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では,9月頃から英国のブルネル大学において研究活動を行い、動的運動時における循環反応の個人差の程度やその成因についてさらなる検討を加える予定である。
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