2016 Fiscal Year Annual Research Report
光子モード制御を用いたEu添加GaN赤色LEDの高輝度化
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15J00887
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲葉 智宏 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ユーロピウム / 窒化ガリウム / 微小共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
① Eu添加GaNの発光過程の定量的解析手法の確立 Eu添加GaNの発光強度を増大させるためには、発光メカニズムに対する深い理解が不可欠である。GaNからEuイオンへのエネルギー輸送は非発光過程である上に、時定数が小さい過程と考えられてきたために詳細な検討は未だされていない。そこで、時間分解フォトルミネッセンスの立ち上がり成分を解析することで、エネルギー輸送過程の解明を試みた。励起後なだらかに発光強度が増大し、そこから減衰する振る舞いをモデルを立てて解析した結果、実験結果を精度よくフィッティングできた。また、解析で得られた値より、Euの発光遷移確率が発光の律速過程であることが判明した。よって、発光強度増大のためにはEuの発光遷移確率増大が最重要であることがわかった。 ② 微小共振器を用いたEu添加GaN赤色LEDの発光強度増大 微小共振器中では光の状態密度が変調され、発光遷移確率や発光の結合モード定数の増大が期待される。そこで、電流注入において発光強度を増大するために、導電性AlInN/GaN DBRの作製を試みた。既報(C. Xiong et al., Appl. Phys. A 96, 495 (2009).)ではAlInN/GaNヘテロ構造は導電性を示さないと報告されている。これは(1) AlInN/GaNヘテロ界面のバンドオフセット、(2) AlInN/GaNヘテロ界面のIn組成の低下が原因と考えられる。これらの問題を解決するために(1) AlInN/GaNヘテロ界面への高濃度Siドーピング、(2) AlInN/GaNヘテロ界面での高In/Al供給比を行った。その結果、n型GaNと比較して遜色ない導電性AlInN/GaN DBRの作製に成功した。この導電性AlInN/GaN DBRを用いて微小共振器構造を有するLEDを作製したところ、4.6倍の発光強度増大に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで未解明であったEu添加GaNの発光過程を評価する方法を独自に提案し、Euの発光遷移確率が発光強度のボトルネックであることを定量的に解明した。様々な非発光過程を有する希土類添加半導体の発光過程の評価は、その複雑さから困難であったが、本手法は他の材料にも適用可能な有用な方法である。 また、これまで成長条件やLED構造の最適化により希土類添加半導体の発光強度増大が試みられてきたが、微小共振器の適用による発光強度増大という新しいアプローチの有用性も示せた。微小共振器を用いた希土類添加半導体の電流注入下での発光強度増大の観察は初めてであり、研究は順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作製した微小共振器を有するLED構造は作製プロセスが最適化されていなかったために、発光強度自体は大きくなかった。そこで、今後は微小共振器構造を有するLED構造の作製プロセス最適化により、Eu添加GaN赤色LEDの更なる高輝度化を達成する予定である。
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Research Products
(19 results)