2015 Fiscal Year Annual Research Report
ラジカルポリマーの酸化還元を利用した集合組織の動的配向制御
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15J00888
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 歓 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ラジカルポリマー / 液晶の動的配向 / 電荷貯蔵 / 協同性 / 集合組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、当初の研究計画に基づき(a)ラジカルポリマー/液晶分子間の相互作用の解明と(b) 液晶の動的配向を可能にするレドックス高分子群の開拓に注力した。 集電基板上に形成したラジカルポリマー層とその近傍に存在するネマチック液晶分子が静電相互作用し、その界面にて規定される後者の配向状態がバルク相まで数十マイクロメートルオーダーのスケールで波及した。ラジカルポリマーが中性状態では液晶分子とのファンデルワールス力が支配的で水平配向が誘起される一方、カチオン/アニオン状態では電極近傍にて形成される電気二重層が垂直配向を誘起することを初めて明らかにした。テトラシアノボレートアニオン等から構成される疎水性のイオン液体は適用した液晶中で例外的に高い解離度(通常の過塩素酸アニオン系の数倍以上)を示し、Gouy-Chapmanモデルで記述できる電気二重層の電場増幅に寄与した。 高い自己電子交換反応速度定数を有するレドックス席を非共役高分子中に導入したラジカルポリマーはドープ状態がアモルファス相全体に迅速に波及するため、電極の表面電荷が鍵を握る液晶配向のスイッチングにおいても極めて有力な役割を果たした。レドックス席としては安定ラジカルのTEMPOに加え、電子授受型のビオロゲン、アントラキノン等を適用しても汎用性高く液晶配向可能であった。 本研究で見出した液晶配向の制御法は集合組織の厚みに関わらず素子への印加電圧を1 V程度まで低減でき(従来法では1-100 V)、さらにメモリ性も有する利点があるため、これを超低エネルギー駆動の液晶デバイスへ応用展開できる可能性がある。また液晶分子の配向に応じて電解液全体のイオン伝導度が変化することも見出し、こうした電荷補償イオンの移動性の制御がラジカルポリマーの蓄電特性の飛躍的向上に繋がることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は以下の事由により、当初の研究計画以上に進展したと判断できる。 平成27年度の研究計画通り、(a)ラジカルポリマー/液晶分子間の相互作用を熱力学・速度論的な観点から解明し、(b) 液晶の動的配向を可能にするレドックス高分子群を開拓し、本配向法を汎用性高く利用できることを明らかにした。さらに予想を超える成果として(c) ラジカルポリマーの酸化還元による集合組織の配向制御がポリマー電極のレドックス現象と電荷補償イオンの移動の協同性を例外的に創発することを見出した。これより、例えば充放電中は高いイオン伝導度性を示す一方、充放電後のみ電解液抵抗が上昇することで高速充放電と高い電荷保持能を両立可能な、全く新しい機能を有する電荷貯蔵デバイスの実現が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づき、「配向を制御可能な液晶相の開拓と協同性に与える影響の解明」に注力する。液晶相としては主にネマチック、コレステリック、スメクチックの3相の配向制御に注力し、ラジカルポリマーとの相互作用や配向スイッチングが与える影響を定量化する。液晶相毎に高速応答性(ネマチック)、光学特性(コレステリック)、極めて高いイオン伝導の異方性(スメクチック)といった特異的な特徴があるため、これらとレドックス現象の協同性を関連付けて議論し、新しいエネルギーデバイスの創製のための基礎知見とする。
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Research Products
(2 results)