2015 Fiscal Year Annual Research Report
リソスフェアの沈み込みにおける球殻座屈破壊現象の群論的考察
Project/Area Number |
15J00934
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 和平 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 球殻座屈 / 球殻テクトニクス / 海洋リソスフェア / バッキンガムのパイ定理 / Batdorfパラメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯におけるリソスフェアの球殻座屈現象(球殻テクトニクス)が研究されてきた。沈み込み帯に沿って巨大地震が起こり地震の規模は、スラブの長さまたはトレンチ長によってきまる。スラブの長さは、弧の長さとリソスフェアの年齢、リソスフェアの厚さにほぼ比例する。球殻テクトニクスにおいてリソスフェアの座屈波長は、沈み込み帯における鎖状の弧の連なりにおける1つの弧を単位長さとしている。また、球殻シェルの変形部の長さは、和達 - ベニオフ帯の長さによって定義され、シェルの厚さは、リソスフェアの有効弾性厚さに相当する。しかし、球殻テクトニクスにおいてスラブの長さと底部周縁の静水圧との関係はまだ明らかになっていなかった。沈み込み帯におけるリソスフェアの球殻座屈現象を解明するために、工学分野で行われてきた手法を援用して研究を行なった。バッキンガムのパイ定理とBatdorfのシェルの寸法のパラメータに基づいて、リソスフェアの沈み込む際の幾何学的パラメータのデータセットから、Batdorfパラメータと正規化された静水圧の間に新たな直線関係を提示した。この結果は、日本地質学会第122年学術大会において成果を発表した。 海洋リソスフェアの変形現象において、リソスフェアの曲率を考慮した高次歪みを伴う座屈方程式の取扱いは与えられてはいなかった。一方、近藤一夫は湾曲した材料の曲げ及び座屈にリーマン幾何学の概念を使用している。この近藤の理論を沈み込み帯の球殻座屈に援用することにより、リソスフェアの曲率を考慮した球殻座屈方程式を記述できることを本研究課題で示した。この結果については、日本地球惑星科学連合2015年大会、新学術領域地殻ダイナミクス年次集会で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では沈み込み帯での海洋リソスフェアの変形と剪断帯での地震現象に関した現象を、群(対称性)の低下の現象として研究を行なう。沈み込み帯でのメカニズムを記述できる方程式の導出とその振る舞いに関して群論を用いた数理研究について進めている。沈み込み帯で見られる海洋リソスフェアの球殻座屈と剪断帯での地震現象についての方程式を記述し、さらに現象を支配する対称性破壊分岐現象の解明を目指す。本年度は、海洋リソスフェアの球殻座屈現象についての研究を進め当初の目標を達成できた。初めに次元解析理論の方法を海洋リソスフェアの球殻座屈現象に援用し、工学分野で行われている球殻座屈の解析手法を元に実際の沈み込み帯でのデータを解析し、海洋リソスフェアが沈み込み帯で球殻座屈を起こしていることを突き止めた。さらに、地球科学では、球殻座屈現象において曲率を考慮した統一的な高次歪みを伴う座屈方程式の取扱いを、今まで議論することができなかったが、多様体の高次元空間へのはみ出しの概念を用いることにより、曲率を持った変形現象に関して統一的な扱いを可能とする近藤の変形の理論を援用し一般的な座屈方程式の導出をおこなった。このことにより、沈み込み帯における曲率を持ったリソスフェアの座屈の記述が可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は群論における分岐理論を用いて、球殻座屈を起こした海洋リソスフェアが、沈み込んでいる沈み込み帯における剪断帯の対称性破壊分岐現象について検討をおこう。 初めに、文献調査を地球科学と工学等の関連する分野について実施する。各分野における実験、観測、理論等の文献を収集し、整理する。得られた結果を基にして、沈み込み帯における海洋リソスフェアの新しい剪断帯の理論を構築し、剪断帯が変化した際の対称性低下についての検討を行う。この際、必要に応じて文献を収集し、研究を遂行する。沈み込み帯における地震発生場である剪断帯に対する方程式を近藤の理論を援用し記述し、この方程式に対してもIkeda et al. (1994)で検討された座屈に対する分岐理論を用いて、対称性破壊分岐現象のメカニズムについて行う。 本年度の成果は、日本における地球科学の主要な学会である日本地質学会や日本地震学会等で公表を行う。また、12月にアメリカで開催される地球物理学の会議に出席し、情報発信を行う(旅費に分担金を使用)。さらに、国際学術誌等への投稿も随時行う。
|
Research Products
(5 results)