2015 Fiscal Year Annual Research Report
乳癌における播種性腫瘍細胞の静止期維持機構の解明と新規治療法の開発
Project/Area Number |
15J00950
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 秀幸 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 乳がん / 幹細胞 / 静止期 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がん幹細胞をin vitroで濃縮するmammosphere 形成を使ってまずマウス由来の代表的な乳がん細胞株E0771と4T1を使って幹細胞で発現上昇する遺伝子を同定した。さらにこれらの細胞株を同所性に移植し、その腫瘍塊をがん幹細胞の表面マーカーでFACSにてソーティングを行ったところ、幹細胞分画で同遺伝子が有意に発現上昇していることを見出した。MCF7とMDA-MB-231という代表的なヒト乳がん細胞株を使ってmammosphere形成を行っても、マウスと同様にヒトでもこの遺伝子発現が濃縮していることを見出している。 次にCRISPR/Cas9 システムを用いて遺伝子破壊 (ノックアウト) 細胞株を樹立した。ノックアウト細胞株では野生型と比べ有意にmammosphere形成能が低下しており、がん幹細胞能の減少が推察される。 乳がんにおいては早期の乳がんであっても診断の時点ですでに乳がん細胞が転移している症例が多いことがわかっている。これらの細胞は播種性腫瘍細胞 (disseminated tumor cell, DTC) と呼ばれ、がん細胞でありながら増殖が止まっているため、既存の細胞周期が早い細胞を標的とする化学療法が効かずに根治できないという問題がある。 今回同定した遺伝子は静止期維持に重要な役割を果たしており、この遺伝子をノックアウトすることでDTCを細胞周期に入れれば、抗がん剤を併用することで根治できるのでないかという考えのもと、DTCモデルを作成することにした。ヒトの乳がん細胞株MDA-MB-231に蛍光タンパクをレンチウイルスを使って安定的に導入し、それを免疫不全マウスへ同所性に移植した。移植後40-50日で腫瘍の長径は1cmに達し、この時点で骨髄をFACSや病理学的に探索すると半数以上のマウスで蛍光タンパクVenus陽性の腫瘍細胞が見られ、DTCを模倣する系が確立した。 次年度は1年間に得られたこれらの知見および実験系を使ってFbxw7が新規治療標的となりうるか否か、その真相に近づいていきたいと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究を開始した初年度であり、まずは実験系のセットアップや、必要なマテリアル作りに専念した年であった。その結果、実験に必要な遺伝子改変細胞や、マウス実験系が概ね完成し、次年度以降に研究を進めていく十分な下準備ができたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に得た遺伝子改変細胞やそれを使って得た基礎的知見、および確立したマウス実験系を用いて、次年度は実際に本番の実験を例数を重ねて再現性を確認しながらデータ取得に専念していく次第である。
|