2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J00986
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 善秀 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大腸癌形成過程で、プロスタグランジンE2およびCox-1, Cox-2が癌幹細胞維持のために果たす役割を検討することを目的とする。 具体的には、(1) Dclk1陽性癌幹細胞が産生するプロスタグランジンE2がオートクライン的に癌幹細胞自身の維持に影響するかを検討する。(2) プロスタグランジンEP1~4受容体のうち、Dclk1陽性癌幹細胞維持のために必要な受容体を特定する。(3) プロスタグランジン/EP受容体の下流で癌幹細胞維持に働く、新規因子を同定する。以上のことを検討項目として研究を実施した。 検討するにあたりより簡便で有用なデバイスとして3D cell cultureを利用した。3D cell cultureでCoxや各EP受容体の活性化や阻害が、Dclk1陽性癌幹細胞と3D cell culture腫瘍塊にどのような変化をもたらすかを検討し、それらの知見に基づいてマウス生体へ展開し、新規標的因子の同定を試みた。 本年度は、3D cell cultureを用いてCox阻害剤投与で腫瘍抑制効果とDclk1陽性細胞の減少を確認した。更にプロスタグランジンEP1~4受容体に対して、種々の受容体遮断薬を投与し腫瘍抑制効果とDclk1陽性癌幹細胞の変化を解析した。解析途中ではあるが、受容体遮断薬の投与の中には腫瘍の増大抑制とDclk1陽性細胞が減少するものもあり、プロスタグランジンE2およびCox-1, Cox-2が癌幹細胞維持のため重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 これらの結果を遺伝子変マウスでも検証すべく、Dclk1-CreERT2;EP(X) flox/flox;ApcΔ716マウスの作成を開始しており、癌幹細胞におけるプロスタグランジンE2およびCox-1, Cox-2の役割の解明を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Apc minマウスの腸腫瘍上でDclk1陽性細胞とCox-1, Cox-2が共発現していることを免疫染色で確認した。またApc minマウスにCox-2阻害剤を経口投与したところ、腫瘍内でDclk1陽性細胞の有意な減少を認めた。 更なる検討として3D cell cultureを用いてCox阻害剤投与でDclk1陽性細胞の減少を確認した。更にCoxの下流で働くプロスタグランジンE2の受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)に対して、種々の受容体遮断薬を投与し腫瘍抑制効果とDclk1陽性癌幹細胞の変化を解析した。結果は検討中の段階であるが、受容体遮断薬の投与で腫瘍の増大抑制とDclk1陽性細胞が減少する可能性が示唆された。 この結果を遺伝子改変マウスでも検証するために、Dclk1-CreERT2;EP(X) flox/flox;ApcΔ716マウスの作成を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
3D cell cultureを用いて引き続き解析を行いDclk1陽性癌幹細胞の維持に最も影響を及ぼすEP受容体を同定する。得られた結果を遺伝子改変マウスでも検証するために、Dclk1-CreERT2;EP(X) flox/flox;ApcΔ716マウスの作成を行う。この遺伝子改変マウスを用いて、ApcΔ716マウス腸腫瘍中のDclk1陽性癌幹細胞特異的にEP(X)を欠失させ、癌幹細胞に及ぼすプロスタグランジンE2の役割、シグナル伝達経路を検討する方針である。同様にDclk1-CreERT2;Cox-1flox/flox;ApcΔ716マウス、Dclk1-CreERT2;Cox-2flox/flox;ApcΔ716マウスの作成にも着手している。 今後はこれらの検討により、大腸癌幹細胞の維持機構にCoxやプロスタグランジンE2が果たす役割を解明し、将来的な大腸癌治療につながる基礎的知見を得たいと考える。
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