2015 Fiscal Year Annual Research Report
余剰次元ゲージ場模型での境界条件に対する任意性問題の完全解への探求
Project/Area Number |
15J00990
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 健吾 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 余剰次元 / 境界条件 / ゲージ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究目的は余剰次元ゲージ場の理論における境界条件の任意性問題を解決することである。現在の粒子加速器で到達することのできるエネルギースケールでの物理は標準模型と呼ばれる枠組み内で記述することができるが、より高エネルギー領域においてはこの標準模型を超えた物理理論が存在していると多くの研究者が期待している。本研究では余剰次元ゲージ場の理論によるアプローチからこの標準模型を超えた理論の構成を目指している。しかしこの模型においても幾つかの解決すべき問題が存在し、その一つに境界条件の任意性問題がある。余剰次元場の理論において余剰次元方向に対して課される境界条件は物理系の性質を決定する上で重要な役割を果たすが、その境界条件はある任意性が存在することが知られている。本研究ではこの任意性のある境界条件を力学変数とみなした動力学的なアプローチから物理的に実現される境界条件を決定することを目指す。この境界条件の動力学は大きく分けて以下の二段階から構成される。 (i)経路積分的な手法による境界条件の動力学の構成 (ii)境界条件間における真空エネルギーの比較による境界条件の決定 (i)の段階はこれまでの先行研究によりすでに構成し、経路積分上の測度の性質により物理的に実現される境界条件には非自明な制限が存在することを示した。したがって平成27年度では(ii)の段階の解析をおこなった。各境界条件が持つ真空エネルギーは量子補正を受けることにより値に差が生じることが知られているので、(i)の段階によって制限された境界条件ごとの有効ポテンシャルを計算し、その最低エネルギーを比較することにより物理的に実現される境界条件を決定した。その結果、特にSU(5)ゲージ理論において標準模型の持つゲージ対称性SU(3)×SU(2)×U(1)、およびフェルミオンを我々のモデルで自然に実現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は現在までSU(N)ゲージ理論に限定してモデルを構成してきた。したがって今後の方向性としてSU(N)以外の古典群、特にSO(N)ゲージ群に対して定式化を拡張していきたいと考えている。しかし、我々の定式化の主な解析手法として行列模型と呼ばれる枠組み内で解析をおこなっているのであるが、SU(N)に関する行列模型の応用例の先行研究は比較的多く存在することに比べて、SO(N)に関する行列模型の応用例はあまり存在せず、さらに、SU(N)群と比べてSO(N)群の幾何的な構造は複雑であることからSO(N)ゲージ群への定式化の拡張が当初の予定よりも時間がかかっていることが理由として挙げられる。 さらに、前年度は博士課程の卒業審査がある年であったので、学位論文の執筆、および口頭審査の準備などにより研究へ費やす時間が当初の予想よりも減ったことも研究の進捗状況の遅れの原因となっている。 したがって今年度は前年度の反省を活かして、研究計画を出来るだけ具体的に立て研究をおこなっていくことが重要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構成したモデルはS^1/Z_2と呼ばれるタイプの余剰次元上でのSU(N)ゲージ理論に限定して構成した。したがって今後の方向性としては現在のSU(N)ゲージ群をSO(N)ゲージ群に模型を拡張することを念頭に置いている。そのためには現在のSU(N)群に対しての定式化をそのままSO(N)ゲージ群へ適用することができる部分とできない部分を明確にし、適用できない部分に関しては新たに定式化を構成し直すことが重要であると考える。 更に別の方向性としては現在構成した模型を例えばRandall-Sundrum時空を入れた余剰次元上で構成することによりより現象論的なモデルを構成することが考えられる。これにより、現実の物理と我々の構成したモデルの対応関係が明確になり、予言能力が向上することが期待される。 更に将来的な方向性としては現在構成した余剰次元に対する境界条件の動力学を他の物理系、例えば物性系や統計的な系へ応用することが可能であるかどうかも検証することも課題である。
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Research Products
(4 results)