2015 Fiscal Year Annual Research Report
スパースモデリングによる革新的な自然科学データ解析技術の開発と実用化
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15J00999
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
太田 守 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | プラズマ波動 / 科学衛星データ / 到来方向推定 / 波動分布関数法 / 逆問題 / ベイズ推定 / スパース性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、自然現象解明に関する有効な知見を得るための、科学衛星データ解析技術の開発および実用化を目指している。複数のプラズマ波動に対応した到来方向の推定は、解を一意に定めることができない逆問題となる。既存研究では、恣意的なモデルの仮定のもとで点推定を用いた推定解の評価が行われてきた. 今年度は、複数波動の到来方向推定手法の一種である波動分布関数法について、1. 少数のデータサンプル数の場合における点推定の有効性、および2. 推定解の客観性の保証についての検討を行った。 まず、入力データの従う確率分布を波動分布関数法の仮定より導出し、ベイズ推定により推定解の事後確率分布を得る評価手法を開発した。一例としてスパース性を有するモデルを付加した場合に到来方向推定が有効に機能するのかを事後確率分布の統計量から評価した。この評価結果をもとにERG衛星でのデータ処理および伝送方法を検討した。次に、本手法においては、事後確率分布を厳密に得ることが困難であったため適した近似推論法についての検討を行った。結果としてハミルトニアンモンテカルロ法により効率的に計算できることが分かったが、現在までに蓄積されている膨大な衛星データを処理するためには、推定時間の短縮方法をさらに検討する必要がある。 本手法は、点推定では解析が困難な無情報に近いモデルにおける推定解の統計的性質を知る上でも有用である。さらに、波動分布関数法の仮定である推定解の非負値性からは、モデルを付加せずとも解集合が有界になるという性質が得られる。この性質から、本手法が様々なモデルを統一的かつ客観的に評価できることを示した。波動分布関数法のモデルに依らない性質を客観的に評価するために、無情報モデルを与えた場合の推定評価を擬似データに対して行った。また、あけぼの衛星のPFXデータに対して本手法を適用し、その有効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
逆問題として推定結果の評価が困難であった波動分布関数法に対して評価基盤の構築をほぼ終えることができ、評価結果をERG衛星でのデータ処理仕様の検討に活かすことができたため、おおむね順調に進展しているといえる。しかし、既存モデルやスパース性を有するモデル間の優位性の評価や、評価手法のさらなる効率化は課題として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた結果をもとにして、平成28年度は波動分布関数法のモデル間の優位性評価および雑音による推定への影響について検討を行う。また、波動分布関数法が仮定する定常ガウス過程が成り立たないデータの場合に推定が有効に機能するのかについて検討を行い、到来方向解析環境の構築を進めERG衛星の打ち上げに備える。
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Research Products
(6 results)