2015 Fiscal Year Annual Research Report
コマチアイトの含水融解実験による初期地殻組成の解明
Project/Area Number |
15J01025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 望 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 冥王代 / 大陸地殻 / コマチアイト / 含水融解実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまでに、高温なマントルにおける対流モデル(Korenaga 2009, Foley et al. 2014)を参考に、冥王代における海洋地殻生成は、プレートテクトニクス開始以前は厚い(約200 km)リソスフェアの底部における微小部分融解度での融解によって、プレートテクトニクス開始以降は海嶺下での断熱上昇による大部分融解度での融解によって生成されると推定し、それぞれの状況で生成されるメルトの主成分元素組成を、高温高圧実験(Kondo et al. Submitted)と、MELTSによる計算によって決定した。どちらの状況でも、生成されるメルトはコマチアイト組成であるが、Fe/Mg比や副成分元素の含有量に大きな差があることがわかった。これら2種類のコマチアイト組成を持つ出発物質を、酸化物・炭酸塩試薬の混合によって合成した。現在、1-3GPaにおける融解相平衡関係とメルト組成を決定するために、ピストンシリンダー型高圧発生装置を用いた実験を進めている。特に、酸素フガシティーが目的の値になっているかどうかを注意深く分析・検討し、より適切に酸素フガシティーをコントロールできるセル・カプセルの組み合わせを決定しており、そのカプセル内で化学平衡を達成させることで、より信頼性の高い実験を行うことを目指している。さらに、より高圧下での実験のため、マルチアンビル型高圧発生装置用のセル・カプセルの構成も開発中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において、本年度の大きな課題は冥王代の海洋地殻を構成したであろうコマチアイトの組成を推定し、その含水融解実験手法を確立することだった。コマチアイト組成については、プレートテクトニクスがあった場合、なかった場合、とそれぞれマントル対流の様式を考慮して火成活動を推定し、高温高圧実験の結果や広く使われているマントル融解モデル計算ソフトを用いて、可能性の高い組成を推定することができた。コマチアイト組成の出発物質の合成、実験条件、実験セルといった実験手法も、ピストンシリンダー型高温高圧発生装置を用いた実験については、先行する含水玄武岩の融解実験を参考に、独自の改良を加えて確立することができた。当初の計画では酸素フガシティのコントロールは想定していなかったが、融解相平衡は酸化還元度に大きく左右される可能性がある。さらに、初期地球の酸化還元度は現在と異なっている可能性もあるため、酸素フガシティのコントロールできる実験セル・カプセルの組み合わせを決定した。一軸加圧式河合型超高圧発生装置を用いた実験については現在実験セル・カプセル組み合わせの確立途中であるが、実験はピストンシリンダー型高温高圧発生装置を用いて行う圧力から進めており、進捗に問題はない。コマチアイトの含水融解実験を行ったあと、生成物の分析も波長分散型プローブマイクロアナライザーを用いて進めている。以上から、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ピストンシリンダー高温高圧発生装置での実験を進め、1-3 GPaでのコマチアイトの含水融解相平衡関係と液相の主成分元素組成を決定する。さらに、一軸加圧式河合型超高圧発生装置を用いての実験セル・カプセル組み合わせを決定し、4 GPa以上での融解相平衡を決定する。そして、コマチアイトの含水融解実験データを相図にまとめ、玄武岩の含水融解実験データと比較して論文化作業を行う。そして、コマチアイトの含水融解における融け残り鉱物組み合わせとそれらの組成、微量元素の分配係数から、部分融解で生成される液相の微量元素組成を決定する。 コマチアイトの含水融解実験を纏める一方で、冥王代ジルコンの微量元素組成データを集積する。そして、ケイ酸塩液相-アパタイト間の分配係数から、冥王代ジルコンが平衡に共存した液相の微量元素組成を決定する。この冥王代ジルコンが平衡に共存した液相の微量元素組成と、コマチアイトの含水融解実験で生成された液相が持ちうる微量元素組成を比較することで、コマチアイトの含水融解実験が冥王代ジルコン組成を説明するか検証し、冥王代の海洋地殻、大陸地殻の形成過程と主成分元素組成を解明する。
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Research Products
(3 results)