2016 Fiscal Year Annual Research Report
コマチアイトの含水融解実験による初期地殻組成の解明
Project/Area Number |
15J01025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 望 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 冥王代 / 地殻 / コマチアイト / ジルコン / 高圧融解実験 / 主成分元素組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまでに、先行研究の高MPTにおけるマントル対流モデル(Korenaga 2009; Foley et al. 2014)を参考に、冥王代のプレートテクス以前における火成活動様式とメルトの生成条件を推定した。そして、そのメルト生成条件での高圧融解実験(Kondo et al. 2016)からメルトの主成分元素組成をFeOやTiO2、Na2O、K2Oに富むコマチアイト質と決定した。そして、プレートテクトニクス以前の間歇的かつ滴り落ちるような沈み込みのある状況(Foley et al. 2014)で、このコマチアイト質地殻が含水融解することを想定し、ピストンシリンダー型高圧発生装置を用いて、1-3 GPaの圧力、1000-1300 °Cの温度で含水融解実験を行った。この実験において、我々は特に酸素フガシティーを注意深く調整、評価した。実験結果として、コマチアイトの含水融解によって生成されるメルトの主成分元素組成はピクライト質となり、出発物質の組成を反映して、Tiとアルカリ元素に富むことがわかった。このメルトの密度はマントルカンラン岩よりも低くなり、メルトはマントル中を上昇して地殻を形成すると考えられる。このメルト組成と融け残り鉱物組成からメルト中のジルコニウム濃度を計算したところ、ジルコンが晶出するにはこのピクライト質地殻の再融解、再々融解が必要であることがわかった。以上のように、冥王代地殻の組成、形成とその後の過程(沈み込み、再融解)について、高圧融解実験の手法を用いてより定量的なモデルを提示する点で、本研究は重要であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度直面した研究を進める上での問題点として、実験中の酸素フガシティーの制御や、非常に脆い実験生成物の表面研磨の難しさがあった。本年度はこれらの問題を解決し、酸素フガシティーを適切に制御できる実験セル・カプセルの作成に成功し、また研磨手法を改良することで脆い実験生成物をより平滑に研磨できるようになった。これらの改良により、より精度の高い実験、分析結果が得られるようになっている。さらに、これまでの研究成果をまとめ国際誌に発表した(Kondo et al. 2016)。以上から、現在までの進捗状況としては順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も実験を進め、これまで行ってきていない温度ー圧力範囲での実験・分析結果を出して行く。得られた実験・分析結果から、コマチアイトの含水融解時の相関係を相図としてまとめる。また、液相の組成や融け残り鉱物組成から液相の微量元素組成、ジルコニウム含有量を計算する。そして、液相が地殻となった後の再融解、再々融解で、生成される液相の微量元素組成、ジルコニウム含有量がどうなるかを計算し、冥王代ジルコンと比較する。以上の実験・分析結果とそれを元にした計算結果から、冥王代地殻の形成とその組成について議論し、国際論文としてまとめ、発表する。
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Research Products
(4 results)