2015 Fiscal Year Annual Research Report
アザラシ科2種の求愛音声を指標とした繁殖モニタリング
Project/Area Number |
15J01068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水口 大輔 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 音響モニタリング / 動物行動 / 繁殖 / 音声コミュニケーション / アザラシ / 鰭脚類 / 海棲哺乳類 |
Outline of Annual Research Achievements |
海氷の減少をはじめとした北極海の急速な環境変化は、海洋生物の分布や行動に様々な影響を与えると考えられる。特に、生活史の大部分を海氷に依存するアザラシ類ではその影響が大きく、多くの種が米国の絶滅危惧種保護法による「絶滅危惧種」に指定されている。このような種の保全計画を立てるうえで、生息海域において繁殖行動が正常に行われているかを把握することは極めて重要である。本研究では、直接観察が困難な氷上繁殖型アザラシ2種について、本種が水中で発する求愛音声を指標として、繁殖時期および海域をモニタリングすることを目的とした。
本年度はまず、求愛の機能を持つ音声タイプを特定するために、発声と性周期との関係性を明らかにすることを課題とした。北海道の小樽水族館において、ワモンアザラシおよびアゴヒゲアザラシの行動観察および水中音声の記録を行なった他、性ステロイドホルモン測定に用いるため、排便が観察された際には糞のサンプリングを行なった。
両種において、繁殖期に特有な音声タイプが観察され、これらの音声には求愛行動が付随していた。また、成熟オスもしくは成熟メスのみに特有な音声タイプも観察されたため、これらの音声はオス・メスを別々にモニタリングするための指標となる可能性が示唆された。サンプリングされた糞については、酵素免疫測定法により糞中濃度を測定した。その結果、オスではテストステロンが、メスではエストラジオールおよびプロジェステロンが、それぞれ糞から抽出可能であることが示された。今後は、これらのホルモン濃度の季節変動を分析し、発声との関係性を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度は、行動観察について十分なデータが得られた他、ホルモン分析に必要な十分量の糞サンプルを確保することができた。また、採取した糞サンプルからの性ステロイドホルモンの抽出・濃度測定にも成功し、この点において研究は順調に進展していると言える。ただし、発声とホルモン濃度の季節変動との関係性を分析するには至っていないため、今後早急に進める必要がある。
研究成果のまとめについては、学会発表4件、論文2本と、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度はまず、発声とホルモン濃度の季節変動との関係性を分析することを最優先事項とする。さらに、飼育下で求愛の機能が特定された音声タイプを、野外で長期録音された水中音データから抽出し、野外におけるアザラシ類の繁殖状況のモニタリングを行なう予定である。
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