2015 Fiscal Year Annual Research Report
ジューン=ガル滅亡前夜の清朝外交の変容過程――講和期外交とその終焉
Project/Area Number |
15J01084
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
多久 孝一郎 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 「辺備夷情档」 / ウリャンハイ / 熬茶使節 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年7、8月の約2週間に中華民国の国立故宮博物院において主に「辺備夷情档」と「軍機処档摺件」の調査・収集を実施した。特に「辺備夷情档」については、本史料が本来全4冊であるが2冊目の档冊が同院に所蔵されていないこと、その2冊目に該当すべき档冊が中華人民共和国中国第一歴史档案館所蔵『議覆档』の中にあることを発見した。この成果は清朝の政策過程の可能な限りの復元を目指す本研究課題にとって重要なことはもちろん、史料学的価値をも有する。この調査成果は史料紹介として学会誌等への発表を予定している。 また、同年9月の約2週間に中国第一歴史档案館において主に「軍機処録副奏摺」の調査・収集を実施し、ウリャンハイ(現トゥヴァ共和国・アルタイ共和国にまたがる地域に居住していたアルタイ系諸民族)を通じた講和期清朝・ジューン=ガル関係について研究を進展させた。彼らの居住地域内には講和後も境界すら存在せず、同地域を通じて清朝はジューン=ガル情勢の情報収集を、ジューン=ガルは茶やタバコを入手する交易をそれぞれ行っていた。清朝とジューン=ガルが直接接する地域にもかかわらずこうした北方の草原地帯での両者の関係は先行研究でほとんど論じられていない。 研究発表に関しては、ジューン=ガルのチベットへの熬茶使節(ジューン=ガルの亡き先代の指導者の供養を名分とする)の第二次派遣と第三次派遣に対する清朝の護送について、考察を深めた上で平成27年5月と翌28年2月に国内でそれぞれ学会発表を行った(第一次派遣はすでに学会誌に発表している)。これらはいずれも学会誌等への発表を予定している。両使節への対応からは、講和成立初期からガルダンツェリン死去直後までの清朝の対ジューン=ガル外交方針が乾隆5年に成立した講和の維持を目指していることがわかり、両学会発表の内容はその後の清朝外交の変容過程を検討する上で欠かせないものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国第一歴史档案館が所蔵する大量の史料の電子公開を実施中であり、十分な公開状況ではなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に国立故宮博物院と中国第一歴史档案館で収集した史料の分析を継続して実施し、講和期に定期的に行われていた粛州を中心とする交易について、およびウリャンハイに関する研究を進展させる。また、中国第一歴史档案館での再度の史料調査を実施する。
|
Research Products
(2 results)